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第6話

そのまま手を下に降ろし繋いだまま教室を出ようとしたので、僕は足に力を込めて引っ張られないようにしたが、大きな手に身長差に体格差もある僕に止めることは無理なことだった。 「あ・・・・た、たに、なか君!」 必死に絞り出した声は谷中君の耳にかろうじで届いたようで、足を止め振り返るも繋いだ手を放されることはなかった。 胸の辺りを抑え込み落ち着こうにも心臓はバクバクと大きな音を上げ胸板を打ち鳴らす。 「なに?」 「あ、あ・・・・の、て、手を・・・・」 先ほどよりも顔が熱く、肌にはジワリと汗が滲む。 きっと手も湿っているに違いないと思い僕はひたすら谷中君に手を放すようお願いするも、谷中君は分かっているのか分かっていないのか、一向に手を放そうとはしなかった。 身長の高い谷中君は腰を屈め僕と目線を合わせ、 「体調悪い?大丈夫?」 なんて・・・・心配してくるのだ。 手を握る力は以前変わらず、振りほどこうにもほどけない。しまいにはお互いのおでことおでこを合わせようとしていたので、僕は僕自身が出せる限りの力を込めて谷中君を押してしまった。 床へと尻餅をつく谷中君。その拍子に握られていた手が解放された。 「あ!あのっ!僕!一人で帰れるので!!た、体調も悪くないし!!あの、あの、あの・・・・ごめんなさい」 いつもは出さない大きな声が僕の腹から喉を通り外へと出て行った。 視界が歪んで見えたのは、きっと涙を流す寸前。鞄を拾い上げて僕は走って教室を出た瞬間、 「んべっ!」 まさかの何もないところで躓くという失態をおかし、僕は廊下へとうずくまる。 我慢していた涙はダムが決壊したかのように大量にあふれ流れ落ちた。 「うぅ・・・・ぐすっ・・・・」 「源道」 僕の視界には谷中君の上履きをとらえた。 笑われる。 そう思うことしかできない自分自身が惨めすぎた。だけど谷中君は笑うことはせず静かに僕の両脇に手を滑らせ、軽々と持ち上げたのだ。 そして谷中君の膝上へと座らされた。 「・・・・え?」 いくら体格差があるとはいえ、高校生になって誰かの膝上に座るとは思いもしなかったし、ましてや男の人のなんて、考えもしなかった。 そしてこの後、僕は衝撃を受けることとなる。 「源道は猫みたいで、可愛いな」 満面の笑みを浮かべ僕を見る谷中君。 その表情に言葉に驚いたおかげか、涙は止まっていた。 「あ・・・・た、たにな、かひゃ!!??」 谷中君は何を思ったのか僕のあご下に手をやり、猫の咽を鳴らすかのように優しくさすってくるのだ。 あご下をそんな風に触られたことなんてなかった僕は、変な声をあげ笑いそうになったのを無理やり止めた。 「止めないで、もっと鳴いてよ」 そう言って谷中君の手が僕の口を塞いでいた手を軽く引っ張りはがし、僕が離れないようになのか腰らへんに置く手に力がこもるのを感じた。 顔が近づいてきたと思い目線を外せば耳に生暖かい空気がかかる。 「んうっ」 自分でも驚くくらいにぞくぞくと体中に電気が走り、全身熱を帯び始めた。 「ふぅ・・・・も、やめて・・・・よ」 真っすぐと谷中君の目を見ることができない僕は、下を向きながらお願いした。すると勢いよく僕の身体を抱きしめ始めた谷中君。 「可愛い!源道めちゃくちゃ可愛い!!俺の、俺の猫になって!!!」 「・・・・は?」

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