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第12話

こんな朝が毎日続き、1日を谷中君と共に過ごすのだが、僕は未だに谷中君への態度をどう捉えるべきか悩んでいた。 慣れない会話のはずなのに谷中君は怒ることもせずただ笑顔で話を聴いてくれた。 そんな状態から早一ヶ月経ち、僕も大分慣れたときだった。一人で居るときに知らない女子生徒から話しかけられた。 「源道ってあんた?」 相手は僕よりも身長が高く高校生にしては少し大人びた感じの綺麗な人だった。だけどその綺麗な顔に眉間のしわを寄せ僕に敵意をむき出していたように見える。 「へっ?あ、は、はい」 僕は持っていた教科書を胸の前に抱き抱え、相手と少しだけ距離を作った。だけど目の前の女子生徒は僕に近づき腕を掴んできた。 「あんたに忠告。隆に近づかないで」 「は・・・・?りゅ、りゅうって?」 僕が知る限りではりゅうという名前の知り合いはいなかった。誰か特定出来ない僕は相手の女子生徒に誰なのか聞き返した。 「・・・・あんたの近くにいる奴。私は忠告したからね」 僕の近くにいる奴と言えば、もう一人しかいない。谷中君の事を言っているのだろうと僕は確信したが、下の名前がりゅうだったのか思い出せない。 でも近づくなと言われても僕が谷中君に近づいているのではなく、谷中君の方から僕に近づいてきているから逃げようがないのだ。 そして僕は察した。きっとさっきの女子生徒は谷中君の事が好きで、いつも僕が隣にいるからうっとうしくてしょうがないのだ。 「郁!こんなところにいた。お待たせ!ん?何かあった?」 僕の頭に手を置き優しく撫でるのは、もちろん谷中君。背の高い谷中君は腰を屈め僕の顔を覗き込む。 「えっと・・・・何も」 さっきの女子生徒の事を話そうか悩んだが、僕は口をつぐんだ。 話せば今の関係が壊れてしまうのではないかと、恐れてしまったのだ。 せっかく出来た猫好きの友達。僕はすでに手放すことが出来なくなっていた。 谷中君は僕の腕を掴み目的の場所へと連れて行ってくれた。移動教室でそう遠くない場所。谷中君は僕の腕を掴んだまま放さない。すれ違う人たちの視線が谷中君から僕へと流れる。そのときの皆の目ときたら、「こいつ?」と言う驚きの見開いた目へと変わる。 「た、谷中君!いつも言ってるけど手放して。持ってなくても僕は逃げないよ?」 「ん〜?聞こえないなぁ〜」 僕を馬鹿にしているのか、それとも本当に聞こえてないだけなのか。僕にはそれを確かめる術を持ち合わせてはいない。

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