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第13話

「郁、今日の放課後暇?」 昼休みに入ってすぐに谷中君は今までに見た中でも最高の笑顔で僕に聞いてきた。先程返された小テストの点数が良かったのかなと思う。 「暇……だよ?」 部活には入っていない僕はこの後は家に帰るのみ。特に親から頼まれていたこともないので深く考えることなく僕は答えていた。 「本当?なら今日俺の家来てよ」 正直、僕は谷中君の笑顔に弱い。 他の人とは違い光り輝き花が散りばめられているような。でも僕は嫌ではない。 「いいよ」と返事を返したが、僕はこの後、後悔することとなる。 「ほら、急いで」 放課後になりホームルームが終わったと同時に谷中君は僕の手を引き急いで学校を出る。 身長も違えば身体の大きさも違う。 そして歩幅も違う。 どんどん離されていく距離、僕はと言えばそりゃ係長にモフれると思い足を早く動かした。 しかし運動が苦手な僕は足がもつれ何度かこけそうになった。その度に「おんぶしようか?」と・・・・本気なのか冗談なのか今一つ分からない。 そして最後には谷中君に鞄を持ってもらい僕は必死で谷中君の背中を追いかけるのだ。 春から夏に変わりかけの時期もあり、僕の背中はしっとりと汗をかいていた。息切れをする僕に対して谷中君は息切れを一つもしていなかった。 「郁〜どうぞあがって」 玄関の扉を開けて入る谷中君に続き僕も入りお目当ての係長の姿を探した。 前に来たときは鳴きながら僕の足に頭を擦り付けてきたのだが、どうしたものか。一向に係長の姿が見えないのだ。 「お、お邪魔します・・・・係長?」 靴を端に並べいつも通されるリビングに行き、ひかれているラグに腰を下ろそうとしたら谷中君に呼び止められた。 「あ、郁違う。今日はこっち」 「え?」 谷中君は天井を指さしていた。 「今日は俺の部屋に行こう」 「・・・・・・え?」

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