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第15話

「郁すごい・・・・いいよ、すごく、いい」 谷中君は興奮しながらもなんとか理性を残し僕に向き合っていた。 額にはうっすらと汗が滲み息切れもしていた。 谷中君の膝の上に座ることは高校の入学式以来で、また座るとは思ってもいなかった。 「う、ヒック・・・・」 気がつけば僕の目からは涙がこぼれ落ちていた。 『痛いことは何もしない』確かに今の僕に痛みは感じていない。 谷中君はクローゼットの中から黒色の猫耳と黄色の鈴を付けた赤い首輪と黒々とした尻尾を僕の目の前に並べた。 まさかとは思ったが、そのまさかで谷中君は僕の頭に猫耳を装着し、首に黄色の鈴が着いた赤い首輪を付け始めた。 抵抗しようにも身体は震え力が入らない。 尻尾をどおするのかと思えば、谷中君は僕のお尻を優しく撫でた。 「ここにいれたいんだ」 そう言って谷中君は僕の尻の割れ目をさすりだした。僕は涙を流しながら小声で「ダメ」と言えば、簡単に諦めてくれた。 でも「また今度ね」と言って指切りげんまんをしたのだった。はっきりと嫌だと伝え谷中君を押し退け逃げれたらよかったのに、僕は恐怖で動くことすら出来ずにただ相手の言いなりになっていた。 『うそつき』 誰かの声が僕だけの耳に届いた。後ろを振り向くも誰もいない。谷中君は僕の姿に興奮し目を細め眺めているだけだった。 『本当は嬉しいくせに』 違う、僕は本当に嫌なんだ。こんな猫みたいで、もてあそばれて・・・・ちゃんと、ちゃんと僕自身を見てくれない。 『嬉しくて、楽しい。嫌なら逃げればいいんだ。分かってるだろ?谷中君は本気を出してはいない。部屋の鍵を閉めたのは誰かが来て僕のこの姿を見られて泣くのを見たくないから。優しいよね谷中君』 うるさい。 『分かってるんでしょ?僕がどうして嫌がらないのか。本当は・・・・』 「郁?大丈夫?」 「・・・・え?」 僕は僕の中の自分自身と語り合い固まってしまっていた。 僕の思考は僕自身でも理解出来ていない。 どうして僕は谷中君と居るのだろうか? どうして谷中君は僕の近くに居てくれるのか。猫好きと公言しているけど、本当に? 僕に合わせて言ってるんじゃないのか? 僕は谷中君を疑い自分自身を嫌悪した。 『猫が好きな谷中君。僕自身を見てるわけじゃないよね』 「郁、可愛い・・・・本当に可愛いよ・・・・」

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