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第16話
僕の困った顔を見ながら微笑み頬を赤くし、耳まで真っ赤にした谷中君。
僕の胸に顔を埋め力強く抱きしめてきた。
僕の心臓は痛いくらいに激しく打ち鳴らしていた。嫌ではない。決して気持ち悪いと思うこともない。僕まで自然と身体が熱くなり、ふあふあとした気持ちになってくる。
「た、谷中くん・・・・もう、やめて・・・・?」
僕は必死に伝えるも、谷中君は僕を放そうとはしない。僕が喋れば喋るほど、腕の力を強くするだけだった。
「郁・・・・もう一個、お願い聞いてくれる?」
「・・・・・・なに?」
最初のお願いが猫耳に尻尾に首輪だったから、次にお願いされるのは過酷なものなのかと思い、僕はおそるおそる聞き返した。
「にゃあって・・・・鳴いて?」
僕は驚き声を失った。
過酷はほどではないが高校生にもなって猫の鳴き真似、しかも猫耳をつけて首輪までつけて鳴けるものなのか。
僕の羞恥心は最大にまで膨らんだ。
「あ・・・・い、嫌だ・・・・もう、うっ・・・・うぅ」
涙が止まらないくらいに流れ出した。
怖い気持ちと谷中君に対しての友情も信じたいと思った。でも僕の中で二つの感情が葛藤している。
このまま居続けるのか逃げてしまうのか。
僕はどうしたらいいのか。でも逃げるを選択しても身体は恐怖で硬直してしまい動くことはできない。そんな状態の僕を見て谷中君は一体何を思い考えるのだろうか。
「あ・・・・ご、ごめん。俺・・・・またやり過ぎた・・・・」
僕の涙を見てなのか前のように正気を取り戻した谷中君。向き合って座る中、谷中君の手が僕の頬に触れ涙を拭う。
そして手についた涙を舐めた事は僕が見ていないときにしたようで、僕が知るよしもない事実。
涙を拭ってくれた谷中君を見れば僕は安心しいつもの谷中君を許してしまう。せっかくできた友達。その言葉が僕を縛り付ける。
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