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第2話

ふと颯真が背後に回り近づく気配。瞬間ふーっと耳元にかかる息にオレは思わずゾクッとしてその場に立ち上がった。 「な、なにしてんだよ」 「そのままだ」  こ、この!目の前の顔は顔色一つ、眉を少しも動かさず平然としている。ああ知ってるよこう言う奴だって。嫌と言うほど分かっている。だけどそう言う問題か。 「オレは仕事しているんだけど?しかもここ職場。今は昼間の一時分かってる?」  焦る自分を他所に颯真は涼し気な表情を変えない。それどころかじわじわとオレに詰め寄る。ま、まずい……。 「大きな声出すと誰か来るかもしれないぞ」  颯真と付き合いだして三年目。周りは誰も自分たちの関係には気づいていない。それには颯真の配慮もある事は重々承知。しかしたまにこう言う事を平気でやってくる所がオレには信じられなかった。 「仕事しないの?」  自分で止めておいてよく言う。口では平然と言うくせに身体は距離を縮め、オレは机と颯真の板挟みになった。 「何考えてるんだよ」  オレの問いに颯真は僅かに口角を上げた。嫌な予感……逃げる隙間もない。颯真は打つ手のないオレを簡単に引き寄せ抱き寄せる。 「久しぶりだろう?二人きりになるの」  颯真の腕の中、熱い息と共に耳元で話されるとゾクゾクしてしまう。 「悪いと思ってるよ、だからってこんな」  正直、多忙なのはオレの方。一緒に暮らしているのに顔すら合わせない。そんな日は珍しくなかった。お互いこの仕事は理解している。颯真がそれに不満があるって訳じゃないって事も理解しているつもりだ。

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