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5月6日
「んっ……ん、ああっ!」
腸壁を押し拡げながら暴れていた二本の指が、勢いよく引き抜かれた。
すぐに挿入 りこんでくるだろう太く長い肉棒を期待して、景実 の後孔がいやらしくヒクつく。
これから与えられる快感を想像するだけで腰が揺れたが、
「ん……」
求める感覚はなかなかやってこない。
「セバスチャン……?」
情欲を隠さない景実の視線を受け止め、セバスチャンは口の端を上げた。
「なんて顔をしてるんですか」
景実の上気した頬が、さらに赤く燃え上がる。
尻を高く上げたまま振り返り、セバスチャンの手元をじっと見つめた。
そこにあるのは、昂ぶってそそり勃った大きな男根。
今日もすました顔で景実の後ろを好き勝手しながら、こうしてちゃっかりと欲望を滾らせていたのだ。
セバスチャンは待ちきれずに震える蕾に、自身の先端をあてがった。
「あ……!」
まるでそうするように教え込まれたかのように、柔らかく解された襞がセバスチャンを優しく包み込む。
セバスチャンが自身を奥へと押し進めると、景実が応えるように背中を仰け反らせた。
内臓を押し上げられる感覚に喘ぎながら、景実は不思議な違和感を覚える。
中を埋め尽くすペニスが、いつもより、
……細い?
「セバスチャ……んああ!」
頭に浮かんだ疑問が言葉になる前に、一気に最奥まで貫かれた。
「い、いきなりぃ……っ」
「嬉しいくせに」
耳に直接低音を注ぎ込まれ、景実の鼓膜が気持ちよく震える。
セバスチャンは、ゆっくりと律動を始めた。
ぬちゃぬちゃ。
ぐちゅぐちゅ。
接合部から漏れ出る音が、景実の羞恥心を刺激する。
「あっあ……ああっ!?」
セバスチャンが挿入の角度を変えると、景実の嬌声がますます艶がかった。
まただ。
気のせいなようで、気のせいではない確かな違和感。
ナカが、
熱い。
「な、なんか、おかし……っ」
「なにがですか?」
「あ、あぁっ、なにこれっ……なにこれぇ!?かっ……」
かゆい!
じくじくとした痒みが、ナカからどんどん湧き上がってくる。
セバスチャンのペニスの通り道を追いかけるかのように。
「セバスチャン、もっと早く!」
「はい?」
「もっと早く!もっと激しく動いてぇ!」
「いいんですか?」
「いいっ!いいから、早くっ!」
「でも……」
「なんだよ!いつも遠慮なんてしないくせにっ!」
「ちゃんとおねだりされてないし……」
「こ、こんのっ……」
意地悪執事!
と悪態吐いてやろうとしたのに、景実の唇はまったく違う言葉を紡ぎ出していた。
「セバスチャンのちんちんで俺の中をグチャグチャに掻き回して!奥まで全部掻き回してめちゃくちゃにしてえ……!」
***
パチン、とゴムが弾ける音がして、景実はゆっくりと首を回した。
音の出所を視線で辿り、そして後悔した。
セバスチャンが手にしていたのは、端っこを固結びした萎びたコンドーム。
「なんで今日はコンドームつけたの……?」
「今日は5月6日、ゴムの日です」
「そんなの誰が決めたのさ」
「さあ?それは知りませんが……生が良かったんですか?いつも『あっ、や、やだ、やだやだセバスチャン!中に出さないでぇっ。後でぐりぐりされるのやだもん、やだやだぁっ!』って言うじゃないですか」
「気持ち悪い物真似やめて!それに俺はそんな言い方してない!……はず!」
セバスチャンはフフンと鼻で笑うと、ベッドから腰を上げた。
親指と人指し指に挟まれたゴム風船(中身はナイショ)がブラブラ揺れる。
「それ……普通のゴムじゃないよね……?」
「どういう意味ですか?」
「わかってるくせに……」
「はて……?」
「なんか塗ってあっただろ!」
景実は勢いよく身体を起こしかけ、だがすぐに腰に走った痛みに、う……と小さく呻いた。
セバスチャンの大きな手が、景実の身体をゆっくりとベッドに押し戻す。
「ほら、横になって。まだ身体が辛いでしょう?」
「誰のせいだ……!」
「……さて?」
「もういい……っ」
唇を尖らせて背を向けてしまった景実を見下ろし、セバスチャンはにやりと笑った。
「いつもの何倍も可愛かったですよ、景実ぼっちゃま」
fin
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