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第7話 家族って・・

 シャワーを済ませて部屋に戻ると、入れ替わりに正臣もシャワーを浴びると言って浴室へ入って行った。 まだ乾いていない髪の毛をタオルでゴシゴシと拭きながら、ベッドに腰掛ける。 ベッドの足元に、押しやられた正臣のスーツケースが開きっぱなしになっていて、別に覗くつもりは無かったが、服の間からはみ出しているモノに目が留まった。 (へぇ、...........リョウくんか。) ヒョイとそれを指先でつまんで引き出すと、見える様にして眺める。 畳んだ服の間には、ポラロイド写真が挟まっていて、そこに映るのは正臣の息子の涼くんと奥さん。 ミキというその女性は、見るからにお嬢さんって感じ。どちらかと云えばおっとりしている風で、正臣を追い出すようなタイプではない。 まあ、余程腹に据えかねたんだろうけど.....。 子供の世話で大変なのに、旦那は他所の女と浮気とか。俺がミキさんでも追い出すだろうな。 それにしても、涼くん。 奥さんに瓜二つだ。正臣の顔立ちは鼻筋が通っていて、目は切れ長。 涼くんはミキさんに似てバッチリ二重瞼だな。可愛いヤ.............。 こうやって写真を持ってきたって事は、案外家族想いなんじゃないのか? そっと見なかった事にして写真を元に戻しておくと、冷蔵庫から水を取り出してコップに注ぐ。 それをカウンターに置いたまま、ドライヤーを持ってくるとそこで髪の毛を乾かし始めた。 ひとりの部屋に、自分以外の人間の荷物があるって事に違和感を抱くが、それこそ、家族になるってそういう事から始まるんだよな。別々に暮らしていた人が、愛情を手に入れて同じ空間で生きていく。生活を共にするわけだ。 正臣にはそれが難しいのかな..........。 俺は女性と結婚なんて、もちろん出来ないんだけど、いつか心から好きな男が出来たら、ひとつの家で暮らしてみたいな、とは思う。互いにわがままを言い合えるような、それでいて一緒に居れば安心できる様な.......。 ああ、早く見つからないかな.......。 って、その前に正臣が帰ってくれなきゃ、いい感じになる人が出来ても此処へ連れ込めないじゃん!! すっかり髪の毛が乾いたところで、正臣が戻って来た。 「ハルミぃ、お前カットできる?」 「え?......そりゃあ美容師だもん出来るさ。まだ金はとれないけど.........」 「なら、オレの髪の毛切って。あ、前髪と耳に掛かるところだけ、な。」 「..........なんで、美容院は?いつも行っているところがあるだろ?!」 なんだか面倒で、そんな事を云ってしまうと、正臣は頭を拭きながらカウンターに置いたままの水の入ったグラスに口を付けて飲み干した。 「あ、。。。」 「ぇ?コレお前が飲むんだった?」 「や、まあ、いいけど........。」 人の飲みかけのものを口に入れるなんて..........、ちょっとビックリした。 なにが入ってるか分かんないのに.......。無防備なヤツだな。 「前にカットしてもらってた娘、ってか、年上の女性なんだけど...............」 そこまで訊いて、なんとなくその先が読めた。 「お前、その人とも浮気したのか?」 「ははは、まあ、な。」 「.................................」 「また誘ってって言われてんだけど、オレとしては一回きりにしたい訳さ。だから、顔見たら面倒だし.........。」 この男、いつかきっと天罰が下るな。 それは云わずに、仕方なくカウンターの横の引き出しからカット用のハサミを取り出す。 「ちょっとだけ、だからな。」 そう云うと、要らない雑誌を広げて正臣に持たせ、髪の毛が落ちるのを受け止めさせた。 コームで解くと、正臣のサラッとした髪を指の間に挟んだ。 昔、この髪に何度触ろうとして指を引っ込めたか.............。 今、こうやって普通に触れるって事に驚きと戸惑いを感じる。でも、それを正臣に云う訳にはいかない。 自然に指の間から零れる髪を空きながら、ほんの僅か5ミリ程度の分量をカットしていくと、最後に整えるために指の先で何回かパラパラと髪を摘んでは落とす。昔の俺が此処に居たら、きっと恥ずかしくてドキドキしていた事だろうな。 「おしまい。...........次は金取るから!」 そう云うと、さっさとハサミを仕舞った。 「サンキュ、ツケといて。いつか払うから、さ!」 立ち上がって洗面所の鏡を見に行く正臣の姿に、そっと笑みを溢す。 - いつかって、いつだよ.............

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