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第8話 なんてこった・・

 冷たいシーツの感触が、やっと肌に馴染んで来る頃。 何食わぬ顔で俺のベッドにあがり込む正臣に、昨日の様な言葉を吐く気にもなれず、俺はただじっと横たわって瞼を閉じた。 壁側に行くために俺の身体を跨ぐと、一応は遠慮がちに布団をめくる。もじもじと足先をしのばせて、出来るだけ俺の身体に当たらない様にしているのか。あの、神経の図太い男が、そんな事をしているのが可笑しくて、思わず笑いそうになるがなんとか堪えた。 でも、互いに背中を向け合って、ほんの僅かの隙間に風が通ると、寒々しい様な気もする。 すると、正臣もそう感じたのか、ピタリと俺の背中にくっついて来た。そこからじんわりと熱が伝わってくると、ドキドキはするんだけれど安心感も得られる様な錯覚に陥る。人肌が恋しいというよりは、自分以外の温もりが心を温めてくれるような、そんな感じ。 暫くじっとしていると、背中の向こうで正臣の籠った声が。 「なあ、ハルミの女関係ってどうなってんだ?」 「.................え?」 唐突な質問に、どう答えようかと思っていると、ゴソッと身体が動く。 「高校の時は何人かでバカやって、女の子もいたけど......。ハルミは結局誰とも付き合わなかっただろ?卒業して美容学校に行ってからも訊いた事ないなって、そう思ってさ。」 「今頃、なに云ってんだよ。どうだっていいだろ、俺の女関係なんか。」 内心はドギマギしながらもそう応える。 「いや、だってさぁ、マジで若いエネルギー溜まってんじゃん。どうしてんのかなって思ってさ。」 「俺はお前と違うの。やたら発散してまき散らす程、節操なしじゃないんだよ。」 「あ、じゃあ、もっぱら右手がお友達?寂しくね?」 「.........その表現がじじクサイ。もう寝ろ。」 布団を掴んで頭を覆うと、俺はフンっと鼻息を吐いた。 急に何を云って来るかと思えば........。正臣の頭の中はそんな事でいっぱいなのか?! こんな男のどこに恋したんだろ、俺。 昔の事とはいえ、本当に情けなくなる。 「自分でする時って、チクビ弄る派?」 「.................................」 「なあ、ケツとかも弄るヤツ居るって、知ってる?」 「................................」 「なあ、」 「うっさい!!!」 いい加減腹が立つ。 ケツって...............、なんて事云ってんだよ! まさか、正臣に俺がゲイだって事はバレてないだろ?! 俺、昨夜、寝てる間に弄っちゃったのかな...........。まさか、な。 さすがに俺が怒ったから、正臣の声はしなくなった。 が、その代わりに何やら布団の中がゴソゴソと煩い。 ふ、っという吐息が聞こえる。 .............................ん? まさか、........................ ぁ、................はぁ、..................はぁ、.......... 頭が痛むのと同時に、足先がじっとしていられなくて、指先を擦り合わせた。 なんとなく話の流れからして、正臣は自分が溜まっているから俺にもそんな話を振って来たんだろう。 それにしたって、いくら元親友とはいっても、俺の横でスルか? せめて風呂場かトイレでヌいてくれよな! 「おい!!うるせえぞ。何やってんだよ。」 「だって、さっきのハルミの裸見ちゃったら..................。その体で自分の弄ってんのかって想像したらさ、...............つい。」 「想像すんな!トイレ行って来い!」 「ヤだ、無理。勃ったまんま行けない。ちょっとヌかせて。」   「ヤだよ~、汚れんだろ!!!」 「あ、ゴム、オレの財布の中に入ってるから。」 「ぇえっ!................」 マジでこのままヌく気ですか?! それでも、布団を汚されるのは嫌だし、仕方なく俺は正臣の財布からゴムを取り出すとベッドに放り投げてやった。 それを掴んで口にくわえると、歯で破る。 その仕草にドキリとした。 男の熱のある瞳。それが一瞬、獲物を与えられた野生の動物の目になると、中身を取り出してつけようとする。 でも、布団の中でうまく出来ないのか、「めんどくせぇ。」と云って布団を剥いだ。 「.............!!!」 露わになった正臣の下半身。 下穿きは太ももで止まり、露出した雄は手の中に納まりきれない程勃起していた。 そこに薄い膜を這わせようとするが、上手く出来ない様で。 一連の動作を少し離れて見る俺も俺だけど、元親友で、昔恋心を抱いた男の立派に成長した雄を目の当たりにしたら、頭の芯がクラクラしてくる。 「おい、ハルミ。ちょっと手伝って!」 「え?......な、何を?」 「ゴム、はめて。」 「え、ヤだよ!」 「頼む、オレ自分じゃやってないからさ、上手く出来ない。」 「...............ㇸ?..................」 たじろいだが、ちょっとの好奇心が働くと、俺は恐るおそる正臣の雄に手を伸ばした。

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