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第10話 沈黙。。

洗面所で軽く汗を拭ってから部屋に戻ると、正臣が丁度冷蔵庫へ水の入ったペットボトルを戻すところで。 「あ、俺も飲む。」 そう言ってとろうとしたら、正臣にコップを差し出された。 今まさに自分が飲んでいたであろう、そのコップ。 それを俺にヒョイと寄越して来る。 「飲みかけだろ?!」 俺は冷蔵庫に手を伸ばすが、「もういらないから、ハルミ、飲んどけよ。」という。 いや、普通自分の飲みかけのもの寄越す? 「ヤだ。」 正臣のコップは取らずに、冷蔵庫から水を出して注ぐと一気に飲み干した。 まるで何もなかったかの様な。 風呂から出てきた時と同じような態度で、俺の横に居る正臣に目をやれば、自分の中の汚点が思い出される。 挑発されて乗ってしまったんだろうか。あんな...................。 ベッドに潜り込んで布団を頭まで掛ければ、深いため息が漏れそうになるのを堪えた。 高校の時に、友人からAV鑑賞会に誘われて、全く気乗りはしなかったが仕方なく話を合わせるために参加したことがある。 その時、急に疼きだしたヤツがいて、俺たちの隣でシコり始めてからは次々に.........。 俺はなんとなくヤバイ雰囲気で、ここで参加しないとゲイだってバレる。そう思って必死で男優に目をやってヌいた事があった。 今頃そんな事を思い出してしまうなんて。 その時、正臣も居て。 俺の横か斜め後ろに居た気がするが、コイツは参加せずに周りの奴らを煽っていただけだったな。 結局、俺は乗せられやすいって事か。 軽く自己嫌悪に陥った。 さっきと同じように背中を向け合って布団に入っているが、今度は正臣が密着する事はなかった。 背中にスーッと隙間風が抜けると、その境い目が俺たちのセクシャリティを分ける。 あんな事をしたって正臣が俺を抱くことはないし、俺も抱かれる事はない。 同じように、古くからの友人。親友という立場のまま、俺たちはこうして背中合わせに横たわり息をひそめて朝を迎えるのだろう。

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