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第12話 新たな発見。

 「今晩、時間あるなら付き合わない?」 店の後片付けを済ませて、スタッフルームに行きコートに手を掛けた時だった。 大原さんが俺の背中越しに声を掛けてくる。 「は?俺、ですか?」 肩を上げると、そうっと振り返り聞いてみた。個人的に声を掛けられたのは初めて。 店の何人かと一緒に酒を飲みに行く事はある。でも、大原さんはバーの店員と仲が良くて、俺たち店の人間とはちょっと離れた所にいるから、誰かと特に親しい訳でもなかった。そんな人からの誘いは、ちょっと驚きだ。 「ハルヨシ君と二人で、ってのはダメ?」 「いえ、ダメとかじゃないですけど.......。」 目の前で小首をかしげて訊かれると、俺の方が年下なのにちょっと優越感に浸れた。 「俺なんかでいいんですか?他の人は?」 そう言いながら周りに目をやるが、今日は金曜日。それぞれに予定がありそうな雰囲気だった。 「いつもみたいに大勢でっていうのはさ、金曜日だし、混んでると入れなかったりするだろ?だから、二人の方がいいんだよ。それとも迷惑かな?!」 「いえいえ、とんでもないです。...........もちろん行きますよ。」 「ホント?良かったー、ハルヨシ君には嫌われてるんじゃないかなって思ってたから、安心した。」 「え、そんな事ないですから!嫌ってなんかいませんって。」 焦った。ちょっと苦手なタイプだなと思っているのがバレたか?! 先輩に睨まれたらヤバイ。これから教えて貰う立場としては、しっかり付いて行かなくては。 「じゃあ、行こう。僕の知り合いの店があるんだ。きっと気にいると思う。」 大原さんはそういうと、コートに袖を通した俺の腕を掴んだ。 ..........なんだろう、この小悪魔のような笑みは。フワフワとした掴みどころのない性格で、同じゲイといっても俺とじゃ真逆な気がする。 店を出て、半ば腕を組んだ格好で歩く事7~8分。 とあるビルにある地下の階段を降りて行くと、目の前に赤い扉が見えてくる。 ’アレキサンダー’..........? そう書かれた看板を目の当たりにすると、ちょっと後悔。俺の頭の中には、ものすごくマッチョな上半身裸の男が、ショートパンツ姿でビール瓶を客に寄越す姿が浮かんでいる。 「あ、ここね、普通のバーだからさ。」 「え?............そうですか?!」 俺の頭の中を見透かされたのか、そう言われて顔が熱くなった。 - 俺の考えてる事、よく分かるなー、俺が顔に出てんのか? 『いらっしゃいませ~』 扉を開ければ中の人から声を掛けられた。 木目調のシックなカウンターの奥で、顎にヒゲを蓄えた優男がいる。歳は、うちのオーナーよりは若いだろうな。 肩にかかる髪を後ろでひとつに結わえて、笑顔で出迎えてくれる男性は、見るからに妖しい雰囲気の人。多分、同じゲイだと思う。 「おーはら、.......新人さん?」 大原先輩を呼び捨てにして、俺の方に目を向けると訊いてくる。 「こんばんは。」 「ああ、いらっしゃい。ゆっくりしてって。」 お辞儀をする俺にそういうと、その人は大原さんのコートを受け取って奥の棚に置いてやる。 なんだか、この二人の間に流れる空気が..................。 カウンター席に腰掛けて、隣の大原さんを見る。 目が合うと、俺の肩にそっと手を掛けて、「この子がハルミちゃん。どうよ、可愛いだろ?会いたかったんだよね?!」と、髭の男性に笑いながら話した。 「は?」 「ああ、ゴメン、ちょっとこの間ここに来た客がきみの事話してて。僕の後輩だよって言ったらさ、連れて来てっていうから。」 「.............」 マジでそんな話になってたのか?どうして俺なんかの事が? 不思議な気持ちで大原さんを見るが、目の前に置かれたグラスに視線が移ると、また髭の男性に目が行く。 オジサンのわりには綺麗な顔立ち。髭が無きゃ、いい感じなんじゃないのかな。モテそうだし。 「こちらはチハヤさん。もうすぐ40歳になっちゃうんだよね。」 髭の男性を紹介しながら言うと、「おい、歳の事は言うなよな。それに後三年はあるんだからさ。」と言ってカウンター越しに大原さんのおでこを指ではじく真似をした。 「あはは、三年に拘るところがオジサンだよね?!」 俺の顔を見ながら言うから、ドキドキしてしまった。 なんだかよく分からないが、この雰囲気に呑まれそうになっている自分が恥ずかしい。 ただただ笑顔を向けるしかなくて、長い夜になりそうな予感がした。

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