30 / 119

第30話 展開。

 ベッドの淵に腰を降ろすと、正臣が風呂から戻るのを待った。 身体は疲れきって、足も立ちっぱなしで重くて、本当なら速攻で布団にもぐって寝てしまうところ。 でも、今はそんな気分になれない。正臣の心境を思うと自分の事の様に心が痛む。 夫婦の問題だと片付けてしまいたいのに、これからのアイツの事や涼くんの事が気になりだすと眠る訳にはいかなかった。 パタン、と閉じられた洗面所のドアの音が無音の部屋に響く。 風に弾かれた小枝か何かが窓ガラスに当たる音がして、それが益々この部屋の空気を重くする。 チラッと正臣の来る方向に目をやると、やっぱりバスタオル一枚を腰に巻き付けただけの姿で。 重大な事案を抱えているってのに、どことなく本人は悟ったかの様な表情になっていた。 俺の向かいに立つと、じっと何かを見据えたようにして動かない。 「.......なに?早く服着ないと風邪ひくぞ。」 そういう俺の顔に視線が泳ぐと、今度は俺の肩をグッと掴んで来る。 「ハルミ、.............」 ひと言俺の名を呼ぶと、そのままベッドの上に押し倒された。 あまりにも突然で、馬乗りになられると言葉が出て来ない。 いつものふざけた行為が、今夜ばかりは意味を持つ様な気さえして。俺は正臣の瞳に自分の顔が映っているのを確認すると、そっと目を閉じた。 不安や戸惑いや、やるせない気持ちを手っ取り早く解消できるのなら、俺は正臣の好きにさせようと思う。それが良いとか悪いとか、今はどうでもよくて。ただ二人の温もりで心を満たしたいと思ってしまった。 .............ハルミ.......... うわ言の様に、俺の首筋を這う唇から声が漏れると、ゾクリとした。 正臣の舌が、鎖骨をなぞり胸に辿り着くまでの間、可哀そうな程期待をする自分。ヌき合いじゃなく、肌を伝うしっとりとした手のひらが、やがて俺の腹から降りて行けば自分で腰を浮かせてスウェットパンツを脱ぎやすくする。 それに従うかの様に、正臣の手が俺の下着に掛かると一気に脱がされた。 ベッドの掛け布団を腕で奥へ押しやると、シーツに張り付けられる様に両腕を掴まれる。 しばし見合った後、正臣の切れ長の眼が俺のくちびるを確認するように伏し目になり、ゆっくりと近づいて上唇を吸い上げられた。 - くちづけ............. 確かにそれは口づけだった。 頬ではなく、俺のくちびるをめがけて正臣が食んできた。そっと吸い上げた上唇が、正臣の舌でなぞられると、俺の身体の芯が火照る気がする。 思わず吐息を漏らしそうになって、やっとの所で堪えると、今度は俺の腹に舌を這わされて。

ともだちにシェアしよう!