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第50話 解ける鎖。

 怖かった............. 正臣も俺と同じように感じていた? 自分が他の奴らと違うって事に不安を感じていたなんて、全く知らなかった。 「それじゃあ、..........正臣は俺の事............」 「変な話、女の子に向ける様な気持ちを持ちながらハルミの横に居た。」 「.............」 俺は、自分だけが切ない想いに苦しんでいるんだと思っていた。 正臣に恋心を抱いて、それは天地がひっくり返る事があったとしても決して知られてはならないとさえ思いこんでいたんだ。 だから高校を卒業と同時に疎遠になっていった。わざと集まりにも理由を付けて行かない様にしていたってのに。 「ちょっと、まだ頭の中が混乱してるんだけど......。率直に云って俺を好きって事でいい?」 「ああ、好きって度合いが、多分ハンパないとは思うけど。ハルミの事が好きだよ。お前に触りたいし、体温を感じていたい。」 「は?..........バ、バカな事.......、でも、ありがとう。」 心臓がヤバイくらいに高鳴って口から出そうになる。 必死で平静を装っても、多分俺の顔は高揚してバレバレだろう。嬉しくて死ぬ。そんぐらい正臣の気持ちに飛びついて応えたいぐらい。......でも、今更恥ずかしくて、そんな真似は出来ないんだ。 「ハルミは?オレの事、............キライ?キライって事はないよな。でなきゃあんな事しないもんな?!」 そう云われて、この前の夜の事を思い出す。 正臣に身体を許してしまった。コキ合いなんかじゃない。アレは.........セッ.......ス、だよな。 「う、.......ん、........それは、.............好..........キだけど............」 「良かった―ッ、ソレ聞いてホッとした。なんか、お前を犯しちゃったんじゃないかって、気になってたんだ。だから顔も合わせられないまま出て来ちゃって、......良かったぁ。」 隣で胸を撫でおろす正臣が、少しだけ可愛く思えてくる。コイツでもそんな風に感じるんだ?!あの、自己中な男が.....。 つい、じっと見つめてしまうと、互いに視線が絡み合い、それが段々と熱を帯びてくるのが分かる。 何処かで押さえていた気持ちの鎖が、今少し緩んだ気がして、それが二人の間に漂う空気を作り出すと、もう誰も止める者はいなくて.....。 正臣が俺の腕をそっと引き寄せると、肩に手を掛ける。 前なら、それを全力で拒んでいた俺。 でも、今はこの手も愛おしかった。俺の肩に伝わる正臣の体温は、ゆっくりと心の中に充満する。 カウンターチェアーに腰掛けたまま、互いに顔を寄せ合うと、そっとくちづけを交わした。 恥ずかしさも躊躇いも、今は全てを忘れて正臣のくちびるの温かさを感じていたかった。

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