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第52話  幸せの形。

 ベッドの上で、俺と正臣の周りだけが熱に包まれると、静かな部屋の中に俺の発した言葉が宙を漂っているようだった。 答えを求めているけど、答えを訊くのは怖い。自分は正臣の傍に居るべきではないような気もして。 「どんな形でも、正臣とミキさんと涼くんは家族だよ。そこに俺が入って行っていいの?入れるのかな.......」 正臣の言う家族ってのが、俺も含めたものを指すんだとしたら、その形は歪なんじゃないのかと思う。 「正臣はミキさんとどうなりたいんだ?ミキさんは離婚を考えているんだろ?どうして?」 「それは、.........オレの気持ちが他の誰かに向いているのを知っているから。それと、涼が成長するにつれてオレに似ていない事を考え始めるんじゃないかって心配しているんだ。そんな事、どうにだって言えるのにさ。」 「じゃあ、このままミキさんとは一緒に暮らすって事?離婚はしないって.......」 「ああ、オレはハルミを好きなのとは別の所で、あの二人の事も想っている。そこは説明しがたいんだが.....。情が湧くって事、あるだろ?そういうものかもしれないんだけど。今はまだ見守りたいと思っているんだ。」 正臣のいう事は少しだけ理解出来たけれど、もう一人の俺が必死で居場所を探している様な気もした。ミキさんと涼くんは俺の事をどう思うだろうか。ミキさんは俺と正臣の仲を受け入れるなんて出来るのか? きっと、多くの人が抱く様に俺たちの仲を気持ち悪いと思うんじゃないのかな。 そうなったら正臣には申し訳ない。俺だって隠して来た意味がなくなってしまう。 「もう少し時間を掛けよう。........俺たちの事。」 正臣の目は見ずに、天井の木目をぼんやりと見ながら云った。 「............、ハルミがそうしたいなら。でも、長い間オレは迷いながら生きてきた。ハルミの事も何処かで吹っ切れないまま。何度も理由を付けては呼び出したのに、なかなか会ってはくれなくて、その度に落ち込んでた。もう、そういう気持ちには戻りたくないんだ。」 「分かった。............時間を掛けようって云うのは、ミキさんと涼くんの為でもある。俺がとやかく言える事じゃないけどさ、俺だって傷つきたくはないし、みんなが幸せになれる方がいいもんな。」 「ああ、幸せになれる方法がある筈だよ。」 そう云いながら、俺の頭にコツンと額を寄せると、そっと頬にくちづけをする。

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