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第56話 チハヤさん?!

 パタン、とドアを開けるなり「チハヤさん、僕、今からリコリス行ってくる!うちで待っててよ?!」と云った大原さんは、片手に持ったサンドウィッチの包みを俺に寄越した。 「え?ママ来てんのか?」 「うん、今連絡あって、久しぶりに顔見たいって。チハヤさんも行く?」 「あ~、オレはいいや、やめておく。」 「そ?!じゃあ、僕だけ行くね。」 「ああ、行って来い。」 目の前で次々と発せられる会話に、ひとり置いてけぼりを食らう俺はサンドウィッチの包みと戯れていた。 開けて良いものやらどうしようかと.......。 「あ、それ、二人でどうぞ!じゃあね、ハルヨシくん。」 「ぁ、.....はいいぃ、ありがとうございましたぁ.............」 大原さんのパワーに圧倒されつつも、なんとかお礼を云った。 バタバタと店を後にした大原さんの姿を思い出しながら、チハヤさんと二人でサンドウィッチを摘む。 自販機で缶コーヒーを買ってもらうとそれに口を付けたが、なんだか緊張してきた。 大原さんの好きな人だってのは分かっているけど、こうやって二人でいると俺自身もふわ~っとした空気に包み込まれてしまいそうで。一見、アブナイおじさんに見えるんだけど、こうしていると落ち着いた優しい人だった。 「で、実はこの前の友人って奴に気があったりするんだろ?!」 「.........は?!」 「ほぅら、酔いつぶれて迎えを頼んだ時の。........酔っぱらった時こそ本音が出るものでね。ハルミくんの様に生真面目なタイプは尚更だ。胸の奥に秘めた言葉がどんどん出てくるから、さ。」 「...............ぇえ???俺、............なんか云ったんですか?」 「まあ、色々。」 「.......................」 チハヤさんの含みのある言葉で、自分の痴態を想像すると泣きたくなるが......。 まあ、それも仕方がない。それに、チハヤさんの前でなら良かったのかもしれないと思った。 「嫁さんが居るってのは結構辛いよな。でも、好きなんだろ?!」 静かに云われると、もう否定するのも面倒で、本当の気持ちを吐露してしまいたくなった。 それに、チハヤさんと二人になれたのも何かの縁、かもしれないかと.....。 「さっき云われた、家族っての.....。俺も正臣に云われて。俺も家族だって......。でも、よく分からなかったんです。けど、さっきチハヤさんが大原さんの事を家族みたいなものだって云ったから、なんとなく腑に落ちた気がした。」 サンドウィッチを手にもったままそう云うと、向かいに座るチハヤさんも手を止めた。 ちょっとだけシン、と静かになると、チハヤさんがサンドウィッチを皿に戻す。 それで、俺もなんとなく同じように皿に乗せた。と、その手をチハヤさんの手が覆ってきて......。 「..............?」 一瞬の事で振り払う事も出来ずに固まった俺は、目をまぁるくしてチハヤさんを見る。

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