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第77話 やっぱり分からない人だ。
「そういえば武田くんだっけ、カレはその後どうした?気まずいまま?」
大原さんに尋ねられて、薬を飲み込もうとした俺は喉に詰まるところだった。
ゴホッと咳ばらいをして、ゆっくりと胸を撫でおろす。
「...........またぶり返しますか?!大原さん、その話始めると機嫌悪くなるじゃないですか。そもそも、奥さんのいる男をどうにか出来るなんて思ってませんから、俺。」
そう云うと大原さんの顔を見上げた。
大原さんは、俺の視線を受け止めると「まあ、ハルヨシくんらしいって云ったらそうなんだけど、前にカットモデルとして店に来てくれた時、カレがハルヨシくんに気があるってのは分かったよ?!そういうの、わりと的中するんだよね~、僕は。口には出さなくてもさ、相手を見る視線とか気持ちの昂りって表に出るもんだからね。」と云う。
「..............そんな顔してましたか?!」
「ああ、可笑しいくらいに。........この二人、何やってるんだろうって思ったよ。だからこそ、取っちゃえって云ったのに。」
「はあ、............まあ、それは、.........」
ホントに怖い人だ。
大原さんには何でもお見通しみたいで、それだけ人生経験があるのか、人を良く見ているのか.......。
「兎に角、カレの奥さんがどんな人か知らないけど、コソコソ付き合える様なタイプじゃなさそうだよね、カレは。」
「だから困るんですよ。俺の事、奥さんに話して分かってもらうとか云っちゃって...........、ぁ、...........」
つい余計な事を口走ってしまうと、自分の額を押さえた。またもや誘導に引っかかってしまったと落ち込む。
「すごいね、カレ!勇気があるっていうのか...........、恐いもの知らず、かな。けど、まあいいんじゃない?!はっきりする方が互いの為だしね。泥沼になって傷ついたって、それはそれで前には進める。ウジウジしている方が心が塞ぐから、僕は良い事だと思うよ。」
大原さんは俺の事を想って云ってくれたのか、それともただの好奇心だけなのか。
それは分からないけれど、兎に角前には進めると云ってもらえて、なんだか納得した。このままじゃ、後戻りも出来ないし前にも進めないから。
「........大原さん、............有難うございます。なんか、心配してもらって......。それに病院まで連れてってもらって。」
今まで、大原さんの事をよく分からない人だと思って敬遠していた俺は、ちょっと反省した。
「いいって、いいって。.........もし、感謝しているっていうんなら、台湾へ行った時に僕の事を慰めてくれたらいいし。禁欲生活に耐えられるか分かんないからねぇ、そん時はハルヨシくんを抱かせて。それでチャラって事で。」
えへへ、と云いながらなんて事を................。
チハヤさんて人が居るってのに。それに、抱かせてって...........、え?そっち側????
「....................」
返事に困ってしまうと、俺は大原さんの顔を無言のままじっと見た。
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