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第91話 勘違い。
睨んでいた眼差しを「ふぅ、」という吐息と共に下げれば、そのまま俺は部屋の中央へと戻って行った。
正臣に掛ける言葉もなく、握る拳に力が入ると少しだけ震えているようで。
それでも、それを悟られない様に背筋を伸ばすとくるりと向きを変えて正臣を見る。
「で、どうしてこんな夜中に来たんだ?出張ってのはどうした?!」
「......終わって、最終で帰って来た。.......顔見れたらって、そう思ったけど......。」
「あ、っそう。........」
会話をしながらも、俺の頭の中は正臣になんと説明しようかと考えている。
反面、このまま言い訳はやめて大原さんと寝たと思わせておこうか、と思ったり。
ずるずると引きずるように続く関係なら、いっそこのまま別れた方がいいのかも。
ミキさんと離婚する意思は、正臣には無いようだし。
あくまでも涼くんの為と云うが、こんな精神状態じゃ俺の方が先にまいってしまう。
台湾での仕事もあるし、どうせ離れるんだ。これはある意味チャンスなのかもしれない。
「いつから?」
「え?」
「大原さんとはいつからそういう関係なんだ。」
ああ、と言いかけて返事に困る。
そういう関係ってのは、つまり身体の、って事だよな。
正臣が想像している様な関係はない。でも、この場合、あると思ってもらった方がいいのか......。
「正臣に応える必要はないと思う。俺とお前が不倫関係って事忘れてる様だけど、世間的にはそういう事だろ?!お前に俺と大原さんの関係をどうこう言ってもらいたくないよ。」
わざと不倫関係って言ってしまったが、相手が同性の男でもやっぱり不倫て事になるんだよな。なんて頭の片隅で自問自答する俺がいた。
「............それは、...........けど、ハルミは俺と、俺が欲しいって言ってたじゃないか。」
「無い物ねだりをしたかっただけだ。手に入るなんて思ってもいない。お前はミキさんと涼くんのものだよ。」
我ながら大人ぶってるな、と思う。こんなに冷静に云えるなんて..............。
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