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第99話 一緒に暮らそう。
シャワーを終えて部屋に戻ると、新しいシーツと枕カバーをセットした。
「..........ハルミ、最後までしてなくて平気?」
「ぁ?」
カウンターチェアーに腰掛けて水を飲んでいる正臣が、ふと俺に問いかける。その意味がよく分からなかったけれど、正臣の言うところの「最後」というのは俺に挿入する事、だろうか?
「...........俺は女じゃないよ。そんな気遣いは必要ない。充分気持ち良かったし、いつもより興奮したっていうか......。てか、変な事云わせんな!恥ずかしい。」
「あ、ごめんごめん。ま、ハルミが良かったならいいんだ。」
それだけを云うと、立ち上がってシーツを整える俺の背中から腕を滑らせて抱きしめてくる。
ふふ、
おもわずニヤケる顔は、自分でも分かるほど幸せそうな笑顔だと思う。
こうして少しの時間を共有する事が、本当に二人の為には必要で。この積み重ねが俺と正臣の愛情を強くしていくんだ。
「なあ、オレ考えたんだけど、もしハルミが嫌でなかったらさ、早くあそこへ引っ越ししてこない?台湾へ行ったり来たりでこの部屋の家賃ももったいない。」
「..........ああ、そうなんだけど..........。」
なんとなくお茶を濁した返事しか出来ない。
正臣と離れたくないと思うと、あそこへ行ってしまってからじゃ尚更辛くなる気がして......。
一緒に暮らし始めたらもう離れるなんて出来なくなりそう。
なんだか、どんどん俺は女々しい男になっていくようだ。もう正臣の事を拒否するなんて気は一切ない。
俺の背中に伝わる温もりが愛おしくて、いつまでも俺の事を包んでいて欲しい。
「心配なんだよな。ハルミと一緒に行くの、あの大原さんだもんな。あの人、カレシとか関係なく遊びそうで、まさかハルミを襲ったりしないだろうな。」
「................ハハ、まさか」
そうは云ったが、先日、キスはされてしまった。
もちろん、正臣には死んでも云わないけど。酔っぱらっていたし、ふざけてただけ。
でも、確かにあの人...................、俺の事を抱かせてって云ったよな?!
「兎に角、食ったら寝よう!」
正臣の腕を取ると、俺はキッチンへ行き深鍋に水を入れて沸かす用意をする。
今夜はパスタ料理を作る事にした。
何か食べて帰るつもりが、なんだか急いて帰って来てしまって.....。結局、食事どころじゃなかったし。
ゆで上がったパスタに、ツナと残り物の野菜を入れてオリーブオイルでざっと炒める。
醤油を入れて和風スパの出来上がりに、隣で見ている正臣が「美味そう」と呟いた。
「冷蔵庫にビール入ってる。飲むか?」
「ああ、いいな。」
早速ビールを取り出して、喉を潤せば生き返る感じ。
「やっぱりいいな、こういうのって.....。オレは早くハルミと暮らしたいよ。オレも料理作るからさ。」
正臣がパスタを口に運びながら云う。
そんな様子を横目で見ながら、俺も同じことを思っていた。
台湾へ行く話が無かったら、明日にでも引っ越ししたいところ。でも、現実は中々厳しいものだ。
「.........、仕方ないさ、先の楽しみに取っておこうよ。」
そう云って、俺もフォークでパスタを掬うと口の中へ運んだ。
- - -
あくる朝、普段通りに正臣は部屋を出て会社へと向かった。
定休日で休みの俺は、ベッドの中で正臣のキスを受けると、幸せ気分が抜けないまま二つ分の枕を抱きしめて眠る。
遠くで聞こえる鳥の囀りも今朝は心地よいBGMになっていた。
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