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第100話 どうして俺?
最近の疲れが溜まっていたのか、はたまた昨夜のものか。思い切り寝過ぎた感のある俺は、漸く重い瞼を開くとベッドの中で大きく伸びをした。
―はあ~、よく寝た~
躰を起こすと先ずはコーヒーメーカーをセット。
いつもの様に豆を挽くと、部屋中に香ばしいコーヒーの薫りが広がり思い切りそれを吸い込むと幸せな気持ちになる。
時計は既に昼近くを示していて、冷蔵庫を覗くと昨夜の残り野菜しかない。
俺はそれを刻むとフライパンで炒める。それからバターを溶かし入れて溶き卵でまとめる様に包んで焼いた。
オムレツっぽい何かを作ると、コーヒーと一緒に口に入れる。
朝食というには遅すぎるし、昼飯ほどガッツリ食べたくもないのでこんな簡単な料理になってしまった。
音のない部屋の中でゆっくりと味わった後、立ち上がると食器をシンクに浸けて洗濯機を回しに行く。
- シーツを洗わなきゃな~
今日は晴れてて良かった。
独り言を呟きながらカーテンを開ける。と、初夏の様なじりじりとした陽の光と熱が差し込んできた。
窓に手を掛けると外の景色を眺める。
昨日観たあの部屋からの景色は、もう暗くてよく分からなかったが、それでも正臣と二人で肩を並べて見た夜空は美しかった。
眩しい日差しに手をかざすと、思い出し笑いをするかの様に口角が上がる。
正臣は、今頃オフィスビルの中でバタバタと働いているんだろうな。
そう思ったら、俺も洗濯が終わる前に掃除機をかけておかなきゃ、と窓際から離れた。
- - -
すっかり乾いたシーツを取り込んで、部屋のゴミも片付けて、夕食はどうしようかと思っていると、軽快な通知音がカウンターの上で鳴った。
スマフォを手に取って見てみると、正臣から夕食の誘い。
今朝別れたばかりなのに.......。
アイツ、家に帰らないのか?!
呆れながらもちょっと嬉しい俺は、そこに返信を送るとクローゼットの前に立って着替える服を選びだす。
結局、俺たちの住まいは何処であれ、飛んで行けるところなら毎日でも顔を見たいと思ってしまうんだ。
そう思うと、尚更海外へ行くのは寂しく感じる。いくら4時間ほどで行ける場所だとしても.....。
国内での4時間の移動と海外とじゃ、慣れていない俺にとっては天と地ほどの差がある。
着替え乍ら色々考えていた俺は、段々と憂鬱な気分になっていった。
- あぁー、どうして俺なんだろう.........
他の店にも可愛い男はいるんじゃないのか?.........なんて、あんなに自惚れていた自分が恥ずかしい。
オーナーも顔で選ぶとか........ないよな~
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