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第105話 云っちゃったよ、、

 「変な事云うなよ。斎藤は.................」 その先の言葉が続かないが、正臣の勘違いに決まっている、と思いたい。 正臣と疎遠になって、高校の同級生とも会う事が少ない俺に、唯一近寄ってきてくれたのは斎藤だけ。 バカな話でも、懐かしさに心を和ませたのは事実だ。それが、俺に対する気持ちが友人としてだけじゃないっていうのか?まさか........。 「.............ハルヨシはそういう所、疎いっていうか。女の子とも付き合わなかっただろ?ちょっと興味があったのは本当だ。」 斎藤は顔を上げると俺の方を見て云った。 「な、正直に云ってしまえば気が楽だ。けど、残念。ハルヨシはもうオレのもんだから。」 「正臣、....」 そんな子供みたいな事を誇らしげに云う正臣に吹き出しそうになる。 わざわざ斎藤を牽制するために呼んだのか? 「オレのもの、とかさぁ、何なんだよ。お前は嫁さんいるだろうが!子供も!ふざけんなよ。」 斎藤が正臣に向かって呆れたように云うが、詳しい事は話していないから仕方がなかった。 「オレ、ミキとは離婚するんだ。で、すぐって訳にはいかないけど、ハルヨシと暮らすつもり。オレとハルヨシは付き合ってる。」 「...........え?」 ____遂に云ってしまった。 斎藤が呆気にとられた顔で正臣を見る。それからゆっくりこちらに向きを変えると俺と目が合った。 「マジで?」 「.........うん、.........なんか、そういう事になった」 「お、.........お前ら、...........マジでデキてんの?」 「気持ち悪いってか?!............いいよ、そう思われるのは想定済み。けど、永い間悩んで此処に至ったんだ。オレもハルミも、充分苦しんだと思う。だから、斎藤にだけは伝えておきたかった。変に期待させても可哀そうだしな。」 「..........期待って、................。オレは別に.......、ハルヨシの事は可愛いって思ってるけど、やっぱり男だし。正臣みたいにどうにかなろうなんて思っちゃいない。ただ、..............可愛いからさぁ~、顔みたくなるんだよな。」 気持ち頬を染めて云った気がしたが、すぐに正臣に肩を叩かれてのけ反ると笑い出した。 「バカか、.........お前の方がキモいだろ、可愛いから顔みたくなるって!..........」 「だって、仕方ないじゃん!顔だけ見たらオレのタイプなんだもんよー」 「げっ、タイプとか云うな!マジでキモイ。」 いつの間にか、重い告白のつもりが笑い話になっていて、俺は少し安堵した。 思い切り嫌悪感を出されたらどうしようかと思って。 でも、斎藤は俺と正臣を認めたとは云っていない。そこはまだ納得できないのかも。 「追加で何か作りましょうか?」 俺たちのテーブルにやって来たチハヤさんはそっと訊いてくれる。 「あ、すみません、もう帰ります。」 そう云って正臣が頭を下げた。 「そうですか。ではまた今度ゆっくりと。」 「はい、ありがとうございます。また伺います。」 俺と斎藤は、会計をする正臣を横目で見ながら時折目が合うと微笑み合った。 ちょっと恥ずかしい。けど、友情は壊れていない様で安心した。 ご馳走様でした、とチハヤさんに声を掛けて、俺たちは店を後にする。 それぞれの心の中に宿る気持ちを声にはしないが、きっと言葉では言い表せない感情が渦巻いているに違いない。 斎藤には申し訳ない事をした。いきなり俺と正臣の関係を知る羽目になるとは。 でも、................なんだか思っていたよりは気が晴れたように感じた。

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