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第107話 悩みどころ。

 夕方になって、少しお客さんが引いてきた頃、大原さんが店長に呼ばれて上のカフェへと行った。 俺は、裏で洋介くんとヘアカラーのサンプルを作っていて、視線の端には二人が映っていたが、敢えてそれには触れなかった。 なのに洋介くんが、「最近、店長と大原さん、二人で内緒話多いんですよ。何ですかね?!」と、俺に訊いてくる。 「..........さあ、内緒話っていうか、仕事の話なんじゃないの?」 俺はそう云って、何食わぬ顔で新色を入れたサンプルを貼り付けていく。 本当は、そろそろ台湾の話が決まってきて、店長と打ち合わせなんかをしているんだろうなと思った。 まだオーナーから出店の報告はないけれど、この店のスタイリストを補充するのかどうかも決めなきゃならない。 俺と大原さんが抜けてしまったら、残った人数では厳しいのかも。 他の支店から誰かが来るとしても、色々大変だろうなと思う。 「大原さん、辞めるんですかね?」 「え?」 突然洋介くんが云うから、俺は目を丸くしてしまう。 _____辞めるって話じゃないと思うけど 「どうして?」 そう訊いた俺に、洋介くんは辺りを見廻して顔を近付ける。 「上でバイトしている彼女が........、なんか大原さんの代りを探さなきゃ、って店長の声が聞こえたって.......。そう言ってたんで。」 「へ、ぇ............、そう聞こえたんだ?!」 「大原さんの顧客って、ちょっと変わった方が多いけど、毎月来てくれますもんね。いなくなったら売り上げひびくから、店長も引き留めてるんですかね?」 「................ぅ~ん。どうかなぁ~。」 なかなか本当の事が云えない俺は、凄く心苦しい。 洋介くんの心配も分かる。俺は兎も角、大原さんがこの店を離れるのは結構な痛手だと思う。 オーナー、どうするんだろう.....。 今更そんな事を心配しながらも、予約のお客さんがみえて俺たちは又店の中へと戻って行く。 俺にはよく分からないけれど、新しい店をオープンさせるってのはすごく大変な事なんだろうな。特に、スタイリストが店を変わるって云うと、その人にお客さんも付いて行ってしまう。 .........、けど、今度行くのは海外だ。ちょっと電車で乗り換えて行けるところじゃない。 大原さんのお客さんはどうなるんだろう.........。

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