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第108話 なんだかね・・
暫くすると、大原さんと店長は店に戻って来たが、なんとなく浮かない顔で。
二人して何を話していたのか.........。
あまり良い感じじゃないよな。大原さんに至っては思い切り眉を寄せているし。
店長も俺たちの方を見ないまま店内へと消えて行く。
「洋介くん、サンプル帳片付けたらタオル洗っていいから。」
「あ、はぁい。」
店長が店の中から洋介くんに聞こえる様に云った。
きっと、今日は早仕舞いをするんだろうと思った。店長は、予約客が入っていない時には早く終わらせてくれる。
日頃、残業や練習で遅くなる俺たちには有難い。オーナーの天野さんもそこら辺は店長に一任していて、月の就業時間がオーバーし過ぎないように配慮してくれていた。
俺が店内の鏡を拭きに行くと、店長がチラリとこちらを伺う。その眼差しは怒っている訳じゃないけれど、俺にしてみればなんだか咎められている様な気持ちになる。
きっと、俺も抜けてしまうから忙しくなるし困った事だと思っているんだろう。
やっと少しづつカットも任されるようになって、これから益々楽しくなると思っていたのに、台湾へ行かされる俺の身にもなって欲しいと思う。けど、それを面と向かっては云えない自分だった。
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