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第118話 俺ってS?

 満腹になった腹をさすりながら二人並んでマンションへ戻れば、さっき見忘れていた部屋の方を覗いてみる。 こっちはほとんど空き室。俺の荷物が入るのを待っているように、一応カーテンだけは正臣の趣味でリビングと同じものが掛けられていた。白っぽい床板がこの季節には涼し気で、冬になったらカーペットかラグを敷こうと思った。 「ベッドはどっちに置く?この部屋?」 正臣に振り返って訊いてみる。 「こっちはリビングと続きで使えるから、奥の方にしよう。この部屋はハルミが練習に使ってもいいし、オレの書斎にしてもいいし。」 「うん、ならそうしよう。それで?今夜は此処に布団を敷く?」 「ああ、シングルを並べて2枚。でも、掛け布団は一枚しかないんだ。今の季節ならタオルケットでいいしさ。............それに、多分二人で寝たら熱いだろうしな。」 そう云うと、ニヤけた顔で俺を見た。 「..............なんかヤラシイ。」 「ヤラシくないだろ?!大人しく寝るつもりだし。」 「..................ふうん、」 「まあ、ちょっとぐらいは触ってもいいよな?!ほんのちょっとだけ。」 「ははは、いいよ。ほんのちょっとなら、な?」 顔を見合わせて二人で笑う。と、正臣の腕が俺の首に回されてそのまま後頭部を撫でてくれた。 「早く、越してこいよ。離れていたくない......................。台湾へ行く前でもいいんじゃないのか?」 撫でながら、俺に顔を近付けると囁くが、その声は少し掠れている様な、ちょっと辛そうだった。 俺は唇を一文字にすると、「風呂、入ろうか?一緒に入れるかな?」と訊く。 「え?」 少し拍子抜けした正臣は、すぐに「ああ、入れるよ。ファミリータイプだから二人でも大丈夫、だと思う。」と云った。 「なら、お湯を入れてくる。」 そう言って、俺はバスルームに向かう。 喉元まで出かかった言葉を呑み込むのに必死だ。 云ってしまいたいけど、もう少し................. 俺ってSっ気があるのかなぁ。正臣の辛そうな顔を見て、可哀そうだけどちょっと楽しんでいる自分に気付いた。 アイツ、もうすぐ俺と離ればなれになるって思っているからなぁ。 ................すぐにでもここへ越してこられるって分かったら、いったいどんな顔をするんだろうか。 そんな事を思いながら浴槽にお湯を溜めだした俺は、浴室の鏡に映った自分の顔を見てニヤリと微笑んだ。

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