6 / 68
*
三度目の粥で漸く部屋の内装にまで気をやることが出来た。
家屋である。
広い。
立派だ。
僕の語彙ではそれが精一杯だった。
布団が敷かれている。
先刻まで僕が寝ていたものだ。
すらりと襖が開く。
上背のある男が現れる。
眼窩が落ち窪み、ぎらぎらと目が人ではないように動いていた。
着物がだぶだぶだった。左足を引きずっている。右目の下に傷がある。
生々しい色だ。
「脱げ」
その声で漸く僕は全裸体ではなかったことに気付く。
ともだちにシェアしよう!