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そうして就寝前の10分を僕は煌めくような幸福で過ごし、すぐに布団に潜り込んだ。
この機だけは逸してはならない。
僕は布団にすばやく、頭まで潜り込むと、耳を押さえ付ける。
程なくして獣が訪れる。
「うぉぉぉぉぁぁあ――――」
襖を突き破る唸りが布団越しにも鼓膜を揺すぶった。
「あ゙ぁぁぁぁぁぁぁ」
地を這い、僕の骨を軋ませ、鼓膜から神経を削ぎ落とす。
男の、あの爛れた唇から溢れ出る呻きだということだけは予測が付いた。
しかし、僕には確かめる度量がなかった。
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