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寫眞の中

 僕は布団に潜り込む機を逸し、じつと身を固めていた。  物音はなかった。  「―――っ」  緊張に締まった後腔から男に貰った万年筆が抜け落ち、ぼたりと濡れた音を立てた。  「ぅおぉぉぉぉぉ…」  獣の嘶きは絶えることも衰えることもなく響いた。  布団の外で聞くその声は僕に恐怖より哀しさを叩き付けた。  胸を突き動かす衝動があった。  僕は全裸体のまま、襖の前に立ち、掌でそれに触れた。  「あぁぁぁぁぁぁ…」  震えている。  「ぅあぁぁぁぁぁ」  それは間違いようのない慟哭。

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