15 / 68
寫眞の中
僕は布団に潜り込む機を逸し、じつと身を固めていた。
物音はなかった。
「―――っ」
緊張に締まった後腔から男に貰った万年筆が抜け落ち、ぼたりと濡れた音を立てた。
「ぅおぉぉぉぉぉ…」
獣の嘶きは絶えることも衰えることもなく響いた。
布団の外で聞くその声は僕に恐怖より哀しさを叩き付けた。
胸を突き動かす衝動があった。
僕は全裸体のまま、襖の前に立ち、掌でそれに触れた。
「あぁぁぁぁぁぁ…」
震えている。
「ぅあぁぁぁぁぁ」
それは間違いようのない慟哭。
ともだちにシェアしよう!