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 容易に襖が開いてしまったことに驚いた。  余りに易く開くものだから、自分は招かれ、且つ、これは何かの罠なのではないかとうたぐった。  「あぁぁぁぁぁ」  男は瞼を閉じ、頭を抱えて悲鳴していた。  全く意識はないようである。  僕は男の傍らに寄り、観察を始めた。  「すまない。すまない。すまない。すまない。すまない。」  人の気配を察したのか、男の呻きは明らかな人語に変わる。  「あ゙ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」  そして悲鳴になる。  男の悲鳴は地を揺るがし、天井さえ突き破る声量なのに哀しかった。  男は首を遮二無二振り回し、呻き、叫び、赦しを請う。  僕は何も出来ない。  ただおたおたと部屋の中を見回すばかりだ。  赦します。  そう云えたら男は少しでも楽になるのかも知れぬ。  しかし、僕はその罪悪を知らず、虚言する言葉すら持ち合わせてはいなかった。

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