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 また、男が悲鳴した。  僕は襖を静に開き、男の枕元に座ってじつと其の貌を見詰めた。  枕元には僕以外に短刀が居た。  この男、死ぬつもりやも知れぬ。  僕は初めて其の気配に寒気した。  眼窩は落ち窪み、薄い瞼からは眼球の世話しない運動が見て取れた。  其の痛ましさに、僕は男の頬に触れた。  「杳」  男の唇が聞いた事もない優しさを伴って蠕いた。  何を意味するとも解らぬ。  解らぬが指先だけは退けてはならなかった。  今、男を癒やせるのはこの枯れ枝の様な指だけであると、判っていた。  刹那、  僕は彼の腕に抱かれていた。

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