20 / 68
*
男は僕を布団に組み敷き、丁寧に着物を除いた。
強い男の髪が首筋を擽る。
男の唇が僕の首の、薄い皮膚を吸い上げた。
びくびくと甘い痺れが腰を貫き、僕は下唇を噛む。
蛇行して男の頭が下へ下がって行く。
肋を撫でられ、包まれ、左乳首に男の唇が行き着く。
心臓が疼く。
乳輪をなぞり、膨らんだ米粒を舌が掬い上げる。
しとどに濡らされ、男の健康な前歯で噛まれると、股間につ突き抜ける痛みがあった。
射精とは違う。
僕の陰茎が勃起するのを手伝う様な痛み。
「―――!!」
胸ごと乳首を吸い上げられ、僕は思い切り腰を突き上げた。
男の開けた着物の胸元に、陰茎の蜜が塗りつけられ、とろりと糸引いたのが、開いた障子から差し込む月明かりに煌めいた。
こんな行為は、知らない。
「ぅぅ…ぁぁ…」
僕は気違いじみた呻きを漏らし腰を揺らした。
彼の指が犯している箇所はいつもと同じ場所だ。
彼の指は、僕の後腔を寛げ、揉み解す動きで僕を犯した。
日中の乱暴さは無い。
非常に緩慢な動きで僕を解いて行く。
足先が震え、覆い被さる彼の身体に縋った。
汗の匂い。
父を思い出した。
解された僕はぐちぐちと卑猥な音を鳴らし始め、流石に羞恥を感じて、膝頭を擦り合わせた。
「杳」
唇が耳朶を食み、耳裏を舐める。
僕は短く息を吐く。
「杳」
彼の唇がそう呟く度に胸を剔る何かが在った。
しかし、其れが何の痛みなのか解らぬ内に物質的で、乱暴な痛みが僕を引き裂いた。
ともだちにシェアしよう!