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 彼の腕が、僕の肩をきつく抱いた。  僕は其の苦しさに、彼を見上げた。落ち窪んだ目には隈が這っている。  僕の唇は奪われた。  脳髄を蕩かされるあの口付けに僕の舌は熔かされる。  鼻で息をすれば生命に支障がないことを知った。  僕は瞼を閉じ、彼の背中に腕を回す。彼は応えて僕を強く抱きしめる。  袷を分け、彼の掌が僕の鳩尾を撫でる。  儚い音で心臓が震えた。  身代わりでも良いのだ。  何のかは判らぬ。  判らぬが、彼の冷たい体温は、僕以外の誰かを求めている。  嗚呼、また。  少年兵の遺影が僕を睨んでいる。

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