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 其の日。  珍しい小春の日和に僕は縁側に出た。  のそのそと蠢きながら、布団を這いだし、今は僕の部屋に置かれたレコードを抱え、縁側に出る。  「髪が伸びた」  しわがれた声が、僕を振り返らせる。  「貴様は女子の様だ」  おかしそうに笑う彼は、いつになく上機嫌で、血色がいい。  女子と言われれば、僕も気が立たないわけではない。  頬を膨らませ、不服を唱えるが、彼は只、口元に拳を宛がい、小さく柔らかに笑っただけだった。  「綺麗な髪だ」  僕の髪を背後から結わえるように纏める手が、指が、骨の様に細く、冷たく、僕の胸を刺す。  唇が、髪に触れる。  「...…貴様が居らねば、俺はもう、生きられぬな」  まるで告白の様な其の言葉に、僕は勢い付いて振り返る。  髪が、彼の指先をすり抜ける。  振り向いて見た彼の顔は、某かの諦観の様な揺らめきを持って、僕は心臓が縮む程に痛んだ。  「何かして欲しい事は無いか」  僕の髪を一束指先に絡めたまま、彼の目が緩んだ。

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