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 最期に彼が呼んだ名前を、自分のものだと思えるほど、僕は楽天的な人間ではなかった。  目を見開いたままの彼は、安らかとか、眠るようにとか、そんな修飾はなく、ただ、もう動くことも、息をすることもない事だけ、僕に伝えていた。  「――…っ」  息を詰め、僕は腰を揺さぶった。  彼の生殖器は萎れることなく、隆と勃起していた。  冷たく硬い其れを、何度も体外に露出せ、納めては、僕の前立腺に擦りあてる。  「~~、―――…」  ごりごりと音がするほど擦りあて、彼の陰茎を締め付ける。  あの動脈の律動も、鼓動も、もはや聞こえない。  「っ…ひっ…」  肌が粟立つ。  全身が震える。  彼の冷たさが、僕に伝染する。  僕に彼を繋ぎとめることはできなかった。  連れて行ってももらえなかった。  「ぁ……」  ぐりりと深く抉って、僕ははしたなく唾液まみれの唇を開き、舌を差し出して天井を仰いだ。  悦楽に涙が溢れた。  鼻の奥がツンとする。  「――――…!!!」  一層深く彼を咥えこみ、尿道がくぱと開いて、一気に精液が溢れた。  僕は彼を見下ろし、その瞼下ろしてやった。  もう開くことのない。  瞼。

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