66 / 68
*
ぐるぐると獣の鳴くような音が僕の腹から響く。
弟がびっくりした顔で僕を見た。
僕は腹をさすってお腹すいたねと合図する。
弟は顔中一杯の笑顔で僕を見る。
「兄ちゃんはいっつもお腹空いてる」
歌うみたいな声。
「いっぱい食べるのにやせっぽち」
にこにこ笑う。
ねー。と、君は笑う。
生まれたときから声を発しない僕を、厭うことも、避けることもなく君は笑う。
『ゲンインフメイなんでしょ』
『兄ちゃんが悪いんじゃないんでしょ』
幼い君になんど慰められたか。
「うえのどうぶつえんで、こどもいちまい、ちゅうにん、いちまい」
また君は歌う。
お母さんに教えられたとおり。
僕の代わり。
君は、僕の声がでないのは、僕のせいじゃないと言ってくれたけど。
僕にはなんだか罪悪感がある。
なんだかよく判らないけど君を見るたびに、今度は守らなくちゃって思う。
今度って、守れなかったのはいつなのかわからないのだけれど。
ともだちにシェアしよう!