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 「うえのどうぶつえんで、こどもいちまい、ちゅうにん、いちまい」  券売所の前で君は言う。  窓口のお姉さんは穏やかに笑う。  差し出された入場券を弟が受け取り、僕がお金を払う。  手話で御礼をするとお姉さんは理解ありげに、  「たのしい一日を」  と僕らを送り出す。  「兄ちゃん!早く!早く!」  入場とともに、駆け出した弟が、よそ見する。僕は慌てて走り出す。  危ないと言いたかった僕の声は相変わらず喉に張り付いたまま。  「ぅわっ!」  弟の小さな体が大きな人の、膝裏にぶつかる。  僕は咄嗟に弟を受け止め、その人に頭を下げた。  「ごめんなさい」  隣で弟も頭を下げる気配があった。  「よそ見は良くないな」  その声は何故か僕の耳によく馴染む。

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