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第6話

side一縷 「信じられないっ!前に約束したよね?」 予想通り蒼は怒っていた。 腰は痛いわ、足は膝が笑って歩けないわでベッドから一歩も動けずにいた。 「ごめん…完全にやり過ぎた」 「当たり前だよ」 「今日はお世話させていただきます」 「当然っ!」 「何かしてもらいたいことあるか?」 「朝ご飯食べたい」 「ちょっと待ってな。持ってくる」 キッチンに置いてあったバターロールとコーヒーをお盆に二人分乗せて蒼の元へ行く。 「今あるのこれしかなかった」 「うん。大丈夫」 寝室で二人で朝ご飯を食べる。 「ご馳走様でした」 パチンと手を合わせて蒼は完食した。 「今日は何か予定あるのか?」 「特にないけど?」 「それじゃ、今日は一日ゆっくりしようか」 「久々にそうしよう」 一緒に暮らし始めてから知ったことだが、蒼はほとんど休みがない。 研究職だから仕方ないのかもしれないけど、家にもたまにしか戻ってこない。 家には俺が一人で住んでいるようなものだった。 だから蒼が久々にゆっくり家にいられると思うだけで、箍が外れたように求めてしまう。 この新しく買ったベッドにも一人で寝るには広すぎて寂しかった。 蒼の近くにいたくて、俺もベッドに潜り込んだ。 蒼はたまに会社からかかってくる電話に出ている。 全世界に販売が開始になったΩの発情期に内服する抑制剤の新薬を開発したのは紛れもない俺のかわいい蒼なのだ。 留学先に本社があるが、それを断って日本支部の研究部に主任として配属となった。 俺と一緒にいたいがためだけに。 俺は今でも不安に思っていた。 本当は蒼は本社の研究部で思いっきり研究していたかったんじゃないか。 俺がいると邪魔になるのではないだろうか。 悶々と考えていたある日、高校時代の友人から電話があって、リビングでそのことを愚痴っていた。 蒼はたまたまその時シャワーと着替えを取りに戻ってきていて、電話の内容を聞かれていた。 「…ねぇ、いち」 「あっ…あお、帰ってたのか?」 「今の電話、どういうこと?」 「聞いてたのか…」 「どういうことなのかって聞いてるの」 「聞いた通りだよ。あおが後悔してないか不安なんだ」 「何で?」 「あおが俺と一緒にいたいから好きな研究できてないんじゃないかって思って」 「好きな研究は今もやってるよ」 「本社の方が設備とかいろいろ優遇されてるだろ?」 「確かにそうだけど、それでも僕はいちと一緒にいたかった。それだけじゃダメ?」 「本当に後悔してないのか?」 「後悔するとしたら、いちと離れていることだよ」 「…ありがとう」 ほとんど家に蒼がいないせいもあって、考えなくていいことまで考えてしまっていた。 それ以降蒼は一週間に一日は休みを取って、家で過ごすようになった。

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