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第13話
会長との話が終わり、先程までいた場所に戻ると、まだ飯田がいた。
「まだいたんだ」
『東条さんと満足するまで話せてないですから』
「僕にくっついているよりも挨拶しないといけない人がいるんじゃないの?」
『挨拶回りの方はもう終わっているので大丈夫です』
「あっ、そう」
そう言いながら、飲みかけていたワインを飲み干した。
料理を新たに取り、給仕から新たにお酒をもらい、食事を再開する。
なかなか満腹になってきた所で、体調に違和感を感じた。
最初は酔いが回っただけかと思った。
だけど、立っていられない。
膝に力が入らない。
カクンと膝が折れた。
『おっと…』
知らない間に隣にいた飯田に抱きかかえられた。
『大丈夫ですか?』
「膝に力が入らない…」
『飲みすぎなんですよ』
「そんなに飲んでない」
一人で立とうとするけど、今度は体に力が入らないようになってきた。
『俺、今日泊まろうと思って部屋取っているんで、使ってください』
「僕が使ったら、君はどうするんだ?」
『適当に考えますよ』
いつもなら拒否するところだけど、今の状況を鑑みると、彼の言葉に甘えるしかなさそうだった。
一縷には今日は会場のホテルで泊まると後でメールしておこう。
明日の始発の電車で帰ろう。
部屋に着いて、ベッドに横になる。
立っている時はかなり辛かったけど、横になればいくらか楽になった。
「申し訳ないけど、部屋使わせてもらうよ。料金は僕が払うから、君は気にしないで」
『いえ、俺もこの部屋に泊まります』
「はっ!?どういうこと?」
『ここまで来て気付かないなんて、どれだけ平和ボケしてるんですか』
「何?」
『あなたを抱きます』
「嫌だっ!帰るっ!」
『逃がすわけねぇだろ』
飯田が覆いかぶさってきた。
何とか逃げようと抵抗して、ベッドから下りてみたけど、立つこともままならない。
『立てないでしょ?よく効くんです』
「何入れた?」
『最近開発中の筋弛緩剤を少々』
「なっ…!?」
それは別の班が研究している薬剤だった。
あれだけ研究部に出入りしているなら、いつでも手に入れることは容易だろう。
多分粉末状にして酒に混ぜたに違いない。
会長との会話で席を離れ、戻ってきてもまだいた彼を不審に思っていれば、あの飲みかけていたワインに口をつけることはなかった。
それをしなかった自分の落ち度だ。
今更悔やんでも遅い。
今はこの状況をどう打破するかを考えるべきだ。
『今この状況をどう逃げようかとか考えてます?』
図星で顔に出てしまった。
『かわいい人だなぁ。だから俺、あなたを手に入れたかったんです』
「僕からはお断りだけどね」
『強がりを言っていられるのも今のうちですよ』
そう言うと、いきなり着ていたワイシャツを力づくで開いた。
その衝撃でボタンは全て飛んで行ってしまった。
「何をするんだっ!」
『何をってセックスです』
「合意の上でないセックスは犯罪だ」
『合意するように持って行けばいいだけの話だ』
「僕は堕ちたりしない」
『それはどうかな』
飯田が口づけようと顔を近づけてくる。
一縷以外の人間とセックスしようとかキスしたいとか思ったことなくて、気持ち悪くて顔を背けた。
『チッ』
飯田の右手が僕の頬を掴み、正面を向くように固定してきた。
顔を背けようにも動かせない。
飯田の唇と僕の唇が重なった。
嫌悪感しかなかった。
飯田はすぐさま舌を入れてきた。
反応しないように何もせずにいると、唇を噛まれた。
たらりと血が滲む。
口の中が鉄錆の味がする。
『少しは楽しませろよ』
「合意でないのに、楽しめるとか思ってるのか。めでたい頭だな」
売り言葉に買い言葉。
飯田の癪に触ってしまった。
体を反転させられ、ズボンを脱がされる。
下着も全て脱がされると、ひんやりとした空気が直にお尻に触れてきた。
すぐにもっと冷たい何かがお尻に触れた。
顔を向けると、飯田がローションを垂らしていた。
「何をするつもり?」
『ちゃんと解してあげますから』
「そういう問題じゃない」
飯田は無遠慮に後孔に指を当てると、そのまま入れてきた。
ぐにぐにと中を解しにかかる。
時折奥の方まで指を入れてきて、前立腺を刺激してくる。
さすがに強い快感には流されそうになった。
『やっぱりココを刺激すると勃ちますね』
「当たり前だろ」
『俺の指気持ちいいですか?』
「気持ち悪いだけ。これは生理反応なだけ」
『強がっているのも今のうちです。そろそろ入れます』
飯田は後孔に自身をあてると、一気に挿入してきた。
「ふっ…!」
あまりに性急な挿入に息が詰まった。
『そんなにギューギュー締め付けないでくださいよ。すぐにイっちゃう』
「さっさとイって終わらせて」
『一回で済むと思ってるんですか?めでたい頭はどっちだよ』
「えっ!?」
『東条さん、結婚して番の方がいるんですね』
「そ…れが…どう…し…た…」
『…独り身だと思っていたのにっ!』
飯田は激しくズンズン奥を突いてきた。
前立腺も激しく刺激される。
さすがに快感に飲まれてしまった。
そこからはどうなったのか分からない。
気付くと飯田はスーツ姿だった。
『気が付きましたか。意識飛ばされていたんですよ』
「さっさと出ていけ」
『言われなくても出て行きます。また来週お会いしましょう』
「もうお前となんか会いたくもない」
『そんなことできるわけないでしょ。それでは』
それだけ言うと飯田は部屋から出て行った。
今が何時かすら分からなかったので、ベッドサイドの時計を見ると夜中の三時を回っている。
(一縷に連絡しないと…)
そう思って鞄を探す。
どこにもなくて途方に暮れていると、部屋の隅の方に放置されていた。
鞄の中から携帯を取り出すと一縷から着信が数十件入っていた。
(日付変わる前には帰るって言ってたもんな…)
さすがにアルコールが入っていて、無理矢理暴行されて、いろいろありすぎて疲れた。
(少し寝よう)
体がベトベトで気持ち悪かったけど、それを上回るくらいの眠気が襲ってきて、本能に従うように深い眠りに落ちていった。
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