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第15話

side一縷 蒼が寝ている間に多項目の検査を行われた。 結構抵抗していたので、怪我していないかが一番怖かったが、それはなかったので一先ず安心した。 蒼は精神的にショックが大きかったのか、全然起きる気配がなかった。 検査の結果が出て主治医に呼ばれた。 「いつも東条がお世話になっております」 『いえいえ、こちらこそお世話になっております』 「それで、結果は…」 『特に異常値は見られませんでした』 「そうですか…」 『ただ…』 「ただ?」 『ホルモン値が危険ゾーン一歩手前の高値を示しているので妊娠の可能性があります』 「ぇっ…」 『もうすぐ発情期だったのではないですか?』 「…はい」 『妊娠しているというわけではないです。あくまで可能性の話です』 「分かりました」 『数か月後もし少しでも体調がおかしいと感じた際はすぐ受診してください』 「そのように伝えます」 頭を思いっきり殴られたようだった。 蒼が妊娠しているかもしれない? 俺の子じゃない子を妊娠…。 信じたくなかった。 もう少し二人での生活を満喫したら子作りしようと話すつもりだった。 足取り重く蒼が寝ている病室へ向かう。 まだ蒼は寝ていた。 先程の話をどうやって蒼に伝えよう。 俺ですらこれだけショックを受けたんだ。 当の本人の蒼は俺以上にショックを受けるはずだ。 悶々と考えていると蒼が目を覚ました。 「……どこ?」 「あお、おはよう」 「…いち?」 「よく眠れたか?」 「うん。ここどこ?」 「あおが通院している病院だよ」 「僕どこか悪かった?」 「全然。どこも悪くないよ」 「そっか。いち、家に帰ろう?」 「その前にあおに話があるんだ」 「何?」 「悪い所はなかったんだけど、一つ懸念材料が残っているんだ」 「何?」 「あお、もうすぐ発情期だろ?」 「…うん」 「ホルモン値が高値だから、もしかしたら妊娠している可能性があるそうだ」 「何言ってるの?」 「だから…」 「僕は妊娠なんかしてないよ?」 「あお…」 「いちも悪い冗談がすぎるよ。とにかく家に帰ろう?」 蒼は現実を受け入れられていなかった。 俺だって受け入れられていないんだから無理もない。 呆然と蒼を見つめていると、蒼はさっさと片付けを済ませてしまっていた。 「いち、家に帰ろう?」 「あぁ…」 現実を受け入れる日は来ないだろうが、今はそっとしておこう。 蒼と二人で退院手続きをして、タクシーで家に着いた。

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