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第25話

side蒼 最近一縷が長時間家を空けることが多くなった。 もちろん平日は仕事に明け暮れて、毎日遅くまで残業で大変だと思う。 だけど、元々休みのはずの土日祝日まで、どこかに出かけているようだった。 何をしているのかと聞いてみたけど、うまくはぐらかされてちゃんとした答えをもらえなかった。 今日も、本来は休み。 最近は全然出かけてない。 一緒にいられる時間が極端に減らされるのはいい気分ではない。 本当は拗ねてしまいそうになる。 さすがにそれをやってしまうとただの子供に成り下がってしまう。 大人なんだし、何か今は言えない事なんだろう。 きっといつか一縷なら言ってくれるはずだし、もう少し待ってみよう。 そう思っていると、ちょうど一縷が戻ってきた。 急いで玄関へ向かう。 「おかえり、いち」 「ただいま、あお」 「どこにお出かけしてたの?」 「警察署までな」 「もしかして…」 「うん。あおの許可なくだけど、被害届出してきた」 「……そっか」 「勝手なことしてごめんな?」 「ううん。僕のことを思ってのことでしょ?ありがとう」 やっと話してくれた事と僕を守ろうと必死に一縷なりに戦ってくれてた事に嬉しくなって、一縷にそっと抱きついた。 最近触れることすら全然なかったので、少しドキドキする。 「今度こそは俺がちゃんと守るから」 一縷は僕よりも少し力強く抱きしめ返してくれた。 翌日の夜、一縷が改まって話があると言ってきた。 「あお、少し話いいか?」 「どうしたの?改まって…」 「飯田の件なんだ…」 「うん?」 「交渉には俺の大学時代の友人に弁護士をしている奴がいて、そいつにお願いした」 「うん」 「あおはどうしたい?」 「何を?」 「飯田をどうしたい?極刑にしたい?示談に応じたい?」 「…………分からない。けど、話を聞いてみたい」 「話?」 「どうしてあんなことをしたのかっていう話」 「それを聞いて決めたいのか?」 「うん。じゃなきゃ分からないこともあると思うんだ」 「分かった。そのように伝えておくよ」 「お願いします」 しばらくして、一縷の弁護士さんから相手側から示談交渉を持ち掛けられたと一縷を介して聞かされた。 僕の希望は話し合いだから、今の段階では示談に応じるかの判断はできない。 本当は会いたくない。 飯田に会えば、あの日のことを恐怖として思い出して、またパニックになってしまいそうで怖い。 でも、どうしてあんなことをしたのか、ちゃんと彼の口から聞きたい。 怖いけど、一縷もいるし、大丈夫。

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