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第2話

 記者の質問が終わり、自宅に帰る支度をする。ふとスマホの画面が光っているのに気づいた。自慢ではないが、俺はメールのやり取りふる相手など全くいない。気になって開いてみた。 今日午後6時、○○区の××店にて飲み会!三年二組だった人は強制参加!  同窓会のお誘いだった。高校三年だった頃の室長からだ。強制参加、か。俺は笑いながら参加する、と返事を返した。ちらりと時計を見る。今は五時ちょっと過ぎ。このまま店に行けば間に合うかな。  パソコンを鞄に入れて、会社を出た。三ヶ月前、コンテストに受かって入った、小説家が活躍する人気会社。主に雑誌やテレビの出演が仕事。それが終わればいつでも帰っていい。本業は小説を書くことだから。  適当にタクシーを捕まえる。 「すみません、○○区の××店まで」  タクシーの後部座席で再びパソコンを広げた。最近取材やらインタビューやらでまともに書けていない。少しでも次の作品を進めようと頑張っている。  今度の小説は高校生の青春を描いたもの。第三の性別のない青春はきっと輝かしいものだろう。そんな想いを馳せながら指を動かす。 「お客さん、着きましたよ」 「え?ああ、ありがとうございます」 「ずいぶんと集中していましたね。代金は1600円です」 「これが仕事なので」  財布を取り出して代金を払う。まだ中にはお札がぎっしり。受賞したときの賞金を入れたままだったな。でも飲み会でお金に困ることはない。  タクシーを降りて店に入る。高校の近くにある居酒屋で、どうやら貸しきっているらしい。 「うそ、白夜君だ!」 「どうも」 「全然変わらないなーおい!」  すでに早く来た人たちは飲み始めていた。肩を組まれて、背中を叩かれながら座る。会社帰りなので俺だけスーツだ。みんなは少しお洒落をしたり、楽な格好をしている。  そっか。今日は日曜日。大体の仕事の人は休みだったのだろう。小説家に日曜日とかはない。毎日が小説のネタであり、毎日が休みでもある。 「あ、九条君だー!」  扉が開き、馴染の人がやって来る。高校時代の野球部部長、九条悠真。昔から男女ともに人気が高く、信頼されている人である。そんな人にはやはり何か特別なものがあって。  顔良し、性格良し、成績良し、運動良し。パーフェクトな彼はαである。

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