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第6話

「ちょ、そこダメっ…………んん!」  指が気持ちいいところを刺激する。撫でて、押して、トントンと叩いて。脚がガクガクして涙が溢れる。気持ちいい、意識飛びそう。 「おい、腰揺れてんぞ」 「知らな、っんあぁぁあ!?」  いきなり前を触られて、強い快楽が襲った。脚がピンと伸びて力が入り、腹が自分ので白く汚れていった。出しても快楽は収まらず、体が痙攣し続けている。 「っ、っ…………ん、っ!」 「うわ………可愛い」  チュッと額に口付けをされる。優しく頭を撫でられた。疲れて脱力しきった体が重くなっていく。とろんと瞼が落ちてきた。 「寝てもいいよ」 「でも、それ…………」  ちらりと九条の膨らんだそこを見る。九条もαだから本能には逆らえない。のに、彼は。 「俺のことは気にしないで。初めての発情期なんでしょ。無理にこの続きをしようなんて思ってないよ」 「…………ありがとう。九条君っていい人だな」 「その君付けやめてよ。さっきまでは"九条"だったのに。もしかして気持ちよさにそんなことまで考えられなかった?」 「……………うるさい」 「図星か」  笑う九条が苦しそうに見える。目の前に発情したΩ。襲いたい、そう思うのが本能なのに。俺が快楽に溺れたのとは違って、九条は自分を律していた。理性で本能を抑えていた。  俺も、そうなりたい。Ωになった以上、発情期は避けられないのだ。例え薬を飲んだとしても、快楽には逆らえない。孕みたい、犯されたいという欲望が生まれてしまうだろう。 「九条、俺は………………」  俺は、βとして生まれたかった。Ωでもαでもなくて。ただ普通の人として、普通の人生を歩みたかった。あの人とは違って。  九条に向かって伸ばした手は、触れることなく力尽きた。眠気に耐えられなくなって、意識を手放す。隣で九条の人肌を感じながら、眠りに落ちた。こんなにも安心したのは久し振りだった。 「…………αとΩ、か」  九条が俺の頭を撫でながら、そう呟いていたことなんて知る由もなかった。もちろんその時、一筋の涙が彼の頬を伝ったことも。  美味しそうな香りが鼻をくすぐって、目が覚める。起き上がろうとすれば、少しの痛みが体に響く。 「あ、起きた?おはよう。勝手にキッチン借りてるけど、ご飯食べれそう?」 「…………腹は空いた」 「ならもう少しだけ待ってて」  顔をしかめてキッチンに立つ九条の後ろ姿の眺める。こいつ料理もできるのか。冷蔵庫にろくなもの入ってなかったぞ。αは本当に何でもできるんだな。  机の準備をしようと思って立ち上がれば、なにも履いていないことに気づいた。慌ててパンツを取りに行く。タンスから新しいのを出して、ついでに服も着替えた。  ふとハンガーにかかったスーツが目につく。確か昨日、脱いでそのままだったのに。九条がやってくれたのか? 「九条、何から何までありがとう」 「いいって。それより体調は?」 「昨日よりかはいい。あんまり怠くないし」  そう言えば九条が振り返った。俺のエプロン。普段は全く使わないけど、こいつが着ると様になる。そんなことをぼんやりと考えていらば、おでこに冷たい手が当たった。 「まだ熱っぽいよ。ご飯食べたら寝ろ」 「え、でも仕事しなきゃ……………」 「寝ろ」 「………………うっす」

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