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第62章 狂気の果てに浮かぶ月1※

「あっあーん……っやぁ……ぁっ」 悲痛なだけだった泣き声に徐々に甘さが滲んでいく。身体が蕩けそうなほど熱い。瀧田の操るバイブは、浅い場所にある快感のツボを的確に責め、嫌がる雅紀の身体を、無理矢理昂らせていった。 貴弘の舌で転がされた乳首も、紅く熟れてツンと突き出てきた。嫌がって身を捩っているのか、もっと舐めてとねだっているのか、本人ですらもう分からなくなっている。 先走りを滲ませて、硬く勃ちあがってきた雅紀のペニスに、瀧田の細い指が絡みついた。びくびくと震えるそれに、根本を締める為の拘束帯を装着して、瀧田は更にバイブの振動を強めた。あうあうと喘ぐ雅紀の腰がもどかしげに揺れる。2人がかりの激しい責めに、雅紀の身体は抗う術もなく堕ちていった。 壁に寄りかかり腕を組んで、凌辱を眺めていた大迫は、ふいに白けた気分になって、ベッドから目を逸らした。 生け贄にされたのは気の毒だが、瀧田と貴弘を狂わせているのは、その雅紀自身の危うい魅力だ。本人は望んでいないのだろうが、あの綺麗な青年にはある種の男を引き寄せて、狂ったように執着させてしまう魔力のような妖しさがある。 ……危ないねぇ……。これはそのうち修羅場になるぞ。 これ以上傍にいると、自分もうっかり巻き込まれてしまう予感がして、大迫は3人を背を向けて、ドアを開け部屋を出て行った。 「総。いい加減、手出しはよせ。余計な玩具も抜け」 のたうつ雅紀の身体に、唇と舌を這わせていた貴弘が、顔をあげて瀧田を睨んだ。その声は興奮に掠れ上擦っている。瀧田も欲情にうっすらと顔を上気させ、くすくす笑うと 「たしかに。雅紀のここは、こんな細い玩具ではもう物足りないみたいだ。もっと大きいものが欲しいって、ひくひくしてますよ」 瀧田は中をぐるっとひと撫でしてから、バイブをゆっくり引き抜いた。その刺激に軽く達したのだろう。雅紀はひゅっと息を飲み全身を痙攣させる。 貴弘はいったん起き上がり、ズボンのチャックをおろして、既にがちがちになった己のものを取り出すと、 「雅紀。挿れるぞ」 玩具を抜かれてぽっかりと口を開け、モノ欲しげにひくついている雅紀の穴に、ゆっくりと近づけていく。 硬い灼熱を入り口にあてがった瞬間、魂が抜けたように虚ろだった雅紀の目に、強い光が宿った。 「……ぃやっ嫌だっやっだめっ挿れないで!」 甘く喘ぐだけだった口から、思いがけず強い拒絶の言葉が飛び出す。そのあまりの剣幕に、貴弘はひるんで腰を少しひいた。 「雅紀……何故拒む?おまえは……私のものだろう?」 雅紀は焦点の定まらない瞳で、必死に貴弘を見つめて 「ちがう……っ。俺は……貴弘さんの……ものじゃ、ない……っ俺を……俺を、抱いていいのは……貴方じゃ、ない…っ」 「……早瀬暁……いや、都倉秋音か。そんなに……あの男が……好きか」 貴弘が苦しげに口に出す名前に、雅紀は切なそうに熱い吐息をもらした。見開いた大きな瞳から、涙が零れ落ちる。 「あの人は、俺の、全てです。お願い……あの人を……あの人を、殺さないでっ。傷つけないでっお願いっ」 雅紀の口から飛び出した意外な言葉に、貴弘は眉を顰めた。 「何を……言っている?雅紀、おまえ…」 「あーあ。やっぱり振られちゃいましたねえ、貴弘」 瀧田が楽しそうに笑いながら割り込んできた。 「だから僕は前から忠告していたでしょう?素直に耳を貸さなかった貴方が悪いんですよ」 「黙れっ」 憤る貴弘に瀧田はケラケラと笑い転げ 「プライドだけは誰よりも高い道化師。好きな男1人まともにものに出来ないくせに」 「貴様っ」 殴りかかろうとする貴弘をひょいと交わして、ベッドから降りると、瀧田はバルコニーの方に逃げていく。 「待てっ総」 貴弘もベッドから飛び降り瀧田を追いかけた。 「僕はね、昔から威張りくさっている貴方が大っ嫌いだったんですよ。桐島家の後継ぎだ、未来の当主だと、いつも周りからちやほやされて……。本当は貴方にそんな資格なんか、なかったのにねぇ」 瀧田はドアを開けてバルコニーに出ると、手摺越しに下をちらっと見た。追いかけてきて掴みかかろうとする貴弘に向き直り、おどけたように両手を挙げてみせ 「僕を殴るの?僕は何もおかしなことは言ってませんよ。それより見て。鼠が大挙して押し掛けてきてる」 瀧田の言葉に貴弘ははっとして、瀧田の指差す方を見た。屋敷の周辺の道路には何台も車が停まっている。 「ここの情報を漏らしたのは貴方?……まあ、いいけど。どっちにしろ、もう終わりにするつもりだったから」 「何?どういう意味だっ」 「ふふ……。最後にいいことを教えてあげますよ、貴弘。貴方にはね、桐島家の血なんて一滴も流れていないんですよ」

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