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傷と絆2

雅紀の手放しの称賛に、暁はちょっと照れ臭そうに笑って、ミトンを手から外すと、雅紀の顔を両手で包んで覗きこんだ。 「俺が出来ることなんて、たいしたことねえよ。慣れればおまえだって出来るようになる。俺はさ、おまえの方がすげえって思うぜ」 雅紀はきょとんと暁を見上げて、首を傾げた。 「え……俺……?」 「そ。おまえのその真っ直ぐさとか優しさってのは、真似して出来るこっちゃねえだろ?前にも言ったよな。俺を暗闇から救い出してくれたのは、おまえなんだ~って。それにさ、おまえといると、俺は自分で思ってるより何でも出来るような気分になれる。すっげー前向きな気持ちになれんだよ。相手を自然とそういう気持ちにしてくれるってのは、おまえの生まれつき持ってる才能なんだろうな」 暁の言葉に雅紀は難しい顔になる。 「才能……?そう……なのかな……。俺にはよく……分からないし…」 「んーとな。おまえの才能はさ、これまであんまりいい方向に作用してなかっただけなんだよ。元カレにしても、貴弘に対してもな。受け取る相手との相性が悪いとさ、どんな長所も逆の作用しちまうことってあるんだ。どっちが悪いとかそういう問題だけじゃなくてさ」 「……相性が、悪かった……?」 「そ。でな、結論。俺とおまえはやっぱ相性バッチリってことなんだよな~。だってさ、お互いに相手にいい影響し合えてるだろ?」 貴弘の名前が出て、暗い顔になってしまった雅紀に、暁はにかっと笑ってみせて 「だからさ、俺とおまえは、出逢うべくして出逢えた運命の恋人ってわけ。そう考えたらさ、すっげえロマンティックじゃねえ?」 「………」 「おい。なんでそこで黙るんだよ~」 「や、運命の恋人とか」 「うわ、何その目。素直じゃねえの~。ここはさ、こくんって頷いてさ、目うるうるしながら手を取り合って甘~い口づけ、とかじゃねえのかよ」 口を尖らせる暁に、雅紀はとうとうくすくす笑いだした。 「もう、暁さんってば夢見過ぎ。どこの少女漫画ですか、それ。……でも、ありがとう。俺のこと、元気づけてくれてるんですよね」 「まあな。おまえが元気で笑ってくれることが、俺の幸せだからな~。おまえだってそうだろ?」 「うん。……あのね、暁さん。俺、明日、貴弘さんのお見舞いに行きたい…」 遠慮がちに切り出す雅紀の頭を、暁はわしわし撫でて 「ん。今日は結局、顔見に行けなかったもんな。いいぜ。んじゃ明日一緒に見舞いに行くか」 「うん。俺ね、貴弘さんに今回のことお礼を言って、きちんと話をしたいんです。貴弘さんの想いをちゃんと聞いた上で、俺のほんとの気持ちもはっきり伝えたい。今まで俺にその勇気がなかったから、貴弘さんを長く苦しめてたんだって、分かったから」 「そっか。そうだな。はっきりさせた方がお互いの為だもんな」 暁は雅紀の腕を引っ張って、部屋のソファーに連れて行くと、雅紀を膝の上に抱きかかえた。 「なあ?雅紀。ちょっと俺の考えを聞いてくれるか?」 「うん、なに?」 「俺はさ、秋音の命を狙っている犯人は、貴弘じゃないって気がするんだ」 雅紀ははっとして、暁の顔を見上げた。 「暁さんも、そう思う?」 「俺もってことは、おまえもそう思うんだ?」 雅紀はちょっと自信なさげに眉を下げた。 「うーん……。はっきりそうだっていう根拠はないんです。でも、違う気がする。貴弘さん、確かに俺にストーカーしたけど、秋音さんを殺そうとするとか、そういうのは違うんじゃないかなって」 「んー。俺も確信は持てねえんだけどさ、あいつはおまえを助けたくて、秋音にあの場所を教えてくれたわけじゃん?な~んかしっくりこねえんだよな。殺そうとしている相手に、いくらおまえの為とはいえ、助けを求めたりするものか?ってさ」 「俺、思うんですけど。秋音さんを狙って、お母さんや奥さんまで巻き添えにした犯人って、目的があって計画的に冷静に、殺人を実行してきたって感じ、するんです。だから、例えば貴弘さんが秋音さんのことすっごく憎くて、カッとなって傷つけようとするっていうのなら、まだあり得るかな~って思うけど、計画的な殺人犯っていうのが、どうしても違和感があるんですよね」 「なるほど。たしかにな。どうも印象が、ちぐはぐって感じするな。俺は貴弘の性格とか、よく知ってるわけじゃねえけどさ。おまえが違和感あるっていうなら、その印象、あながち間違いじゃねえかもしれねえな」

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