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後日談 『おしおき6』

「うわっ。すごい……っ」 リビングに入るなり、雅紀は驚いて思わず声をあげた。 広いダイニングテーブルに、刺繍入りの真っ白なテーブルクロス。その上には所狭しと、豪華な料理の皿が並んでいる。 唖然としている2人の反応に、藤堂は満足そうに微笑むと 「君たちの歓迎会だよ。ちょっと奮発してケータリングを頼んだんだ」 「藤堂社長……」 「藤堂さんっ。そんな。俺たちの方がお礼に来たのに、こんなにしてもらったらダメですよっ」 焦る2人に藤堂は鷹揚に手を振り 「これは俺の気持ちだからね。気兼ねなんか要らないよ。さあ、雅紀。そこに座って」 雅紀は秋音と顔を見合わせ、恐縮しながらテーブルに歩み寄り、藤堂に向かってぺこっと頭をさげた。 「ほんと、ありがとうございます。俺……俺、何てお礼を言えばいいか……」 「お礼なんかいいさ。君たちが喜んでくれるなら、それで俺は満足なんだ。さ、食事しながら、向こうでの話をゆっくり聞かせてくれないか?大体の事情は都倉から電話で聞いているけどね。俺は、君の幸せそうな顔を見るのを、ずっと楽しみにしていたんだからな」 雅紀は勧められるまま、藤堂の向かいに腰をおろし、秋音もその隣に座った。 「そうか……。じゃ、事件の方は一応解決したんだな」 「ええ。主犯の片岡は全ての罪を認めました。母の事故もやはりそいつの仕業だった。まだ裁判中ですが、俺が命を狙われる危険は、もうないと思います」 リビングに移動して、食後のコーヒーを楽しみながら、向こうに戻った後のことを、なるべく詳しく藤堂に報告した。藤堂は時折質問を交えながら、じっくりと話を聞いてくれた。一番気にかかっていた事件が一応の決着をみたことに、心から安堵してくれているようだった。 「それが一番だよ。しかし……都倉も辛かったが、雅紀も大変な思いをしたね。ようやく安心して都倉の側にいられるわけだ。一緒に暮らしているんだろう?ああ、そうだ。籍はもう入れたのかい?」

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