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第8章 幸せのかけら1※
なんだかすごく幸せな夢を見ていた気がする。
ゆっくりと瞼を開けると、目の前にはえらく至近距離に、俺の顔をのぞき込んでいるまさきの顔があって…
「わっ…」
驚いた声とともに、まさきの顔が遠ざかる。
おいおい。なんでおまえが驚くんだよ…。
あきらは、寝起きのぼんやりした頭のまま、無意識に腕を伸ばすと、
「おはよう」
何故か慌てふためき真っ赤になっている、まさきの頭をぐいっと引き寄せた。
「わ…っちょ…ちょっとやっ…んっ」
もがくまさきを、逃がさないようにがっちりとホールドし、唇を奪う。
「んっ…うっ…んーーーっ」
塞がれた口で抗議の声をもらし、しばらくじたばた暴れていたが、舌を絡め強く吸うと、まさきは急に大人しくなった。いやむしろ積極的になった。
「ふ……んっ……ぅん……ん…ふ…」
例の色っぽい吐息をもらしながら、仕返しとばかりにねっとりと舌を絡めてくる。熱い息遣いと艶っぽい水音が、起きがけの脳を直撃した。
あきらは息を荒げ、キスを続けながら身を起こし、まさきの体を布団に押し倒すと、のし掛かって更に口づけを深めた。
「信じらんないっ」
まさきは目元を赤く染め、うるんだ瞳でこちらを睨み付けている。
あきらは端に寄せていたローテーブルから、灰皿を引き寄せ、マッチを擦って煙草を吸い始めた。
「んー?何が?」
「とぼけないっ」
「朝の挨拶じゃん。おはようって」
「けだものですかっ」
「誘ったのはおまえだぞー。可愛い顔してのぞきこんでくるのが悪い」
まさきの顔がますます赤くなる。
「…っ誘ってないっ」
「あれはどう考えても誘ってたね。据え膳喰わぬは男の恥って言うだろー。だいたい途中からは、おまえの方が積極的だったし」
「ちが…」
「違わないよ。自覚あるだろ。それにしても、おまえ何気にキス巧いよな。危うく腰砕けになるとこだった」
ゆっくりと1本煙草を吸い終わると、あきらは立ち上がり、リビングを出て行こうとする。
「…っどこ行く…」
「トイレ。朝の生理現象がさ、おまえの可愛い悪戯のせいでおさまりつかなくなってんの。ついでにシャワー浴びて、朝飯の準備するから。まさき、悪いけど布団、片しておいてくれる?適当に畳んで、押し入れに突っ込んどけばいいからさ」
あきらは一方的にそれだけ言うと、ニヤっとしながらウィンクして、リビングを出ていった。
閉まった襖を、まだ赤い顔をして睨み付けていると、またすぐ襖が開いて、あきらが顔をのぞかせ
「あ。煙草吸うなら、昨日のコンビニの袋にライター入ってるからな。ちなみに、マッチ使ってもいいけどさ、その2つ折れのヤツ、慣れてないと火傷するから気をつけろよ」
「……。」
「いつまでもそんな顔してると、また襲うぞ~。あ、そういや、おまえの方は大丈夫なの?」
「…なにが…?」
「息子さん。勃ってたろ?どうせなら抜きあいっこでもするか?」
すかさず手元の枕をひっつかんで、ふりかぶったまさきに、あきらはニヤニヤしながら首をすくめ、襖を閉めた。
つかんだ枕を仕方なく胸元に抱き込んで、まさきはひとりジタバタしていた。
うーー訳わかんないっ。あきらさんってノンケじゃないのかよっ。なんであーゆーことするかな。いや途中で、悔しくて、ムキになっちゃったのは俺だけどさ。
ご指摘通り、俺の息子さんは反応していた。
朝から心臓わしづかみのディープなキス。しかももつれあってる間中、あきらの膝が股の間にあって、敏感な内腿やその上の方を、やわやわと刺激していた。好きな相手にそこまでされて、勃たない方がどうかしている。
あそこで途中で止められたのは、あきらの手がジャージの裾から潜りこんできて、脇腹や胸の下をまさぐり始めたからだ。
おそらく彼の指先が求めているだろう柔らかい乳房は、自分にはない。そう思ったら一気に頭が冷えて、思わずあきらの体を蹴りあげていた。
…抜きあいっことか…冗談きつい…。っていうか、勃ってたのバレてたなんて、恥ずかし過ぎるっっ
あ~もうっノンケってこれだから嫌なんだ。こっちの気も知らないで、軽い気持ちで罪つくりなことするんだから。
でも…あきらのも間違いなく反応していた。朝勃ちかもしれないけど、自分とのキスで、萎えたりはしていなかった。
それがちょっと嬉しい…とか…思ったりして…
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