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後日談 『おしおきー13』
かろうじて、イく瞬間にティッシュで押さえるだけの理性は残っていた。だから下着も部屋着も汚さずに済んだが、独りでしてしまった後の虚しさが半端ない。
雅紀はのろのろと身体を起こし、ベッドから立ち上がった。酔いも興奮も完全に醒め果てていた。大きなため息をつき、気怠い身体でとぼとぼと部屋を出る。
夜中に他人の家の中をうろうろしたくはないが、取りあえず洗面所で手と顔を洗ってすっきりしたい。
もうとっくに寝ているだろう藤堂と秋音を起こさないように、足音を忍ばせて階段を降りた。洗面所で手と顔を洗いトイレを済ませると、またそっと階段をあがろうとして、リビングの硝子扉から灯りが漏れているのに気づく。
……?藤堂さん、まだ起きてるのかな。
そういえば喉がからからだ。水でももらおうかと、踵を返してリビングに向かう。
ドアを開けて中を覗き込むと、藤堂がソファーに座ってノートパソコンを開いていた。
テーブルの上には吸い殻の溜まった灰皿と飲みかけのブランデーグラス。仕事の資料もある。藤堂が顔をあげてこちらを見た。
「ごめんなさい、こんな夜中に。お仕事中でした?」
「ああ……君か。どうした?眠れないのかい?」
雅紀はおずおずと藤堂に歩み寄ると
「ちょっと……喉が乾いちゃって。お水もらいますね」
「ああ。水なら冷蔵庫にペットボトルがあるよ。それとも、コーヒーか何か入れようか?」
立ち上がろうとする藤堂を制して
「ううん。お水でいいです。俺、自分で取るから、藤堂さんはお仕事続けてください」
慌ててぱたぱたとキッチンに向かうと、冷蔵庫の前で振り返り
「あ。藤堂さんも何か飲みます?」
「ああ、そうだね。じゃあ、俺にも1本くれるかい?」
雅紀は頷いて500mlの水のボトルを2本取り出すと、リビングの方へと戻った。ボトルを差し出すと、藤堂は微笑みながら受け取り
「ありがとう。君も座るといいよ」
雅紀はちょっと躊躇してから、1人分のスペースを空けてソファーに腰をおろす。藤堂はくすっと笑ってペットボトルのキャップを外すと、ひと口飲んでから
「名前。戻ってしまったなあ」
「……え……?」
キャップを開けてボトルに口をつけかけた雅紀は、藤堂の呟きに首を傾げた。
「藤堂さん、ってね。薫って呼んでくれって言っただろ?」
「あ」
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