382 / 466
後日談 『おしおきー17』
秋音の部屋の前まで来ると、雅紀がもじもじと尻込みを始めた。
「どうした?早く中へ」
「お、俺っ。自分の部屋に戻ります……っ」
秋音は眉をあげ、雅紀の顔を覗き込むと
「おまえにちょっと話があるんだ。いいからちょっと付き合ってくれ」
「でもっ。もう夜遅いし、話なら明日の朝起きてから」
「雅紀。頼むよ。どうしても今、おまえと話がしたい。大事なことなんだ」
肩に手を置く秋音の表情がなんだか辛そうで、雅紀は心配顔になり
「……大事な……こと……?……じゃあ、ちょっとだけ、お邪魔します」
「助かるよ。ありがとう」
ドアを開けて中に入る秋音に続く。部屋に入るなり、秋音は雅紀をぐいっと抱きすくめた。
「……っぁ」
驚く雅紀の髪に顔を埋め、ほおっと息をつくと
「すまない。俺が悪かったんだ」
「……え……?」
「言葉が足らないのは、俺の悪い癖だ。すまなかった」
雅紀は焦って秋音の腕の中から顔をあげた。
「どっ、どうして、秋音さんが謝るの?秋音さんは何も悪くないでしょ。俺の方こそごめんなさいっ」
「おまえが、どうして謝る?」
「だって……前に秋音さんに言われてたのに、俺、油断して。あれって、隙を作っちゃったってことですよね」
眉を八の字にして涙目になっている雅紀に、秋音はふっと笑って
「ばかだな。おまえは悪くないさ。隙あらば口説こうとする、あの人がいけないんだ」
優しく微笑む秋音に、雅紀は戸惑いの表情を浮かべた。
「……秋音さん……怒って……ないの?」
「当たり前だろう。おまえに対して怒ってなんかいない。俺は自分に腹を立てているだけだ」
秋音は抱き締めていた腕を解き、雅紀の手を握ってベッドに連れていくと、並んで腰をおろした。
「俺の態度で、おまえ、また不安になっていたんだな」
手をぎゅっと握られ、優しく問いかけられて、雅紀はしおしおと項垂れた。秋音は手をぎゅっぎゅとして
「暁へのおしおき……な。あれは、半分は俺のつまらない嫉妬だった」
「……え?」
秋音の意外な言葉に、雅紀はびっくりして顔をあげた。秋音はバツの悪そうな顔で、雅紀から目を逸らし
「おまえを泣かせた暁に対して、怒っていたのも本当だ。だが……おまえに特別な存在だと言われた暁に……嫉妬もしていた。悔しかったんだ」
「……秋音……さん……」
書籍の購入
ロード中
ロード中
ともだちにシェアしよう!