390 / 449
後日談 『おしおきー25』※
事故で記憶を失って生まれた『暁』という人格。無口で口下手で人付き合いが得意ではない自分とは、真逆と言っていいほど、明るく開けっぴろげでお調子者な男。
あれは自分の中に眠る願望が、表に現れた姿なのかもしれない。もちろん、彼の周りを取り巻く環境や、田澤の影響も大きいとは思うが。
その暁が偶然、雅紀に出会い、恋に落ちた。俺が可愛がっていた昔の後輩。本当に奇跡のような再会だった。そうして、雅紀の柔らかくて優しいひたむきな気質が、孤独の闇から暁を……俺を救い出してくれたのだ。
雅紀が暁を特別だと思う気持ちは、理解出来る。悔しい気持ちがないわけではないが、あの出逢いから恋人への進展という道のりは、暁でなければ、おそらく実現出来なかった。何よりも得がたい雅紀という存在。つまらない嫉妬なんかするよりも、俺は暁に感謝するべきだろう。
後ろから雅紀を抱き締めたまま、思わず感慨に耽っていたら、雅紀がもぞもぞと身じろぎをした。
「……ぁき……と……さぁ……ん……」
「どうした?」
俺の間抜けな受け答えに、雅紀は恨めしそうな顔で振り返り
「……上の……空……?……いれた、まま……なのにぃ」
……っ。そうだった。俺のものは雅紀の中だ。
雅紀は焦れたように腰をもじもじさせて涙目だ。秋音は苦笑して雅紀の細い腰を掴むと
「悪かった。でも上の空なんかじゃないぞ。おまえの中が居心地良過ぎて、ちょっと惚けていただけだ。
……動くぞ」
秋音はそう言うと、ゆっくりと腰を使い始めた。ぎりぎりまで腰をひき、じわじわと奥へ突き進む。狭い隘路は、うねうねと複雑な動きをして、秋音のものに絡み付き押し戻し引き込もうとする。自分に与えられる快感の強さに、秋音は翻弄され、時折、息を詰まらせた。
……ああ……いい……っ。もう長くは持たないな。
1度自分で抜いたとはいえ、雅紀の身体の心地よさは自慰とは別格だ。自分の下で甘えた鳴き声をあげ、くねくねと見悶えている美しい獣。体感だけでなく、視覚も聴覚も狂おしく刺激され、秋音の雄は陥落寸前だった。
「……んんぅ……っんあぁ……っん……ぁっあ……ぅ……っんぅ」
髪を振り乱し、雅紀が猫の鳴き声のような喘ぎを撒き散らす。
「っまさ……きっいい……かっ?ここ、は……っどうだ」
「あっぁー……っんいい ……っい、ぃいっん」
書籍の購入
ロード中
コメントする場合はログインしてください
ともだちにシェアしよう!