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後日談 『おしおきー27』
「満ち足りた顔しやがって」
シーツとタオルを入れて洗濯機を回していると、寝坊した秋音たちより更に遅く起きてきた藤堂が、まだ眠そうな顔で洗面所にやってきた。渋い顔で呟く藤堂に、秋音はにこりとして
「おはようございます、藤堂さん。二日酔いですか?」
藤堂はぼさぼさの頭を手櫛で押さえながら首を竦め
「まあな。失恋のやけ酒だ。……可愛い天使くんはまだベッドの中か?」
「いえ。俺より先に起きて朝飯作ってますよ」
藤堂はちょっと目を見張り、ふっと表情を和ませ
「そうか。そいつは楽しみだね」
洗面所で顔を洗い始める藤堂に
「昨夜はありがとうございました。おかげさまでこのところのもやもやが、一気に晴れました」
藤堂はタオルで顔を拭きながら振り返り
「もう俺はお節介はしないぞ。しっかり捕まえとけよ」
「ええ。肝に銘じます」
神妙な顔の秋音に、藤堂は苦笑すると、鏡を覗き込んで髪の毛を直してから、秋音の肩をぽんっと叩いて洗面所を後にした。
「この後すぐ温泉旅館に向かうのかい?」
雅紀の作った和食料理で遅い昼食を済ませると、リビングでコーヒーを飲みながら藤堂が問いかける。雅紀が秋音の顔を見ると
「いえ。その前にちょっと墓参りに行ってきます」
「そうか。だったら車を貸してやるぞ?」
「ありがとうございます。でも大丈夫ですよ。バスで行って、そのまま旅館に向かいますから」
「あの辺りは今、ちょうど桜が見頃だそうだ。雅紀。楽しんでおいで」
雅紀は嬉しそうに微笑んで
「はいっ。あの……藤堂さん。いろいろと……お世話になりました」
満ち足りた顔をしているのは秋音だけではない。雅紀も憂いの消えた晴れやかな笑顔だった。藤堂は眩しそうに雅紀を見つめて微笑み
「いい笑顔だねえ。君はそういう顔が一番綺麗だよ。また喧嘩したらいつでもおいで。俺はいつだって大歓迎だからね」
雅紀は目を見開き、少し顔を赤くしてから
「ありがとう。でも、藤堂さんもまた素敵な恋、してください。可愛い恋人が出来たら……俺にちゃんと紹介してくださいね」
藤堂は虚を突かれ、目を丸くして秋音と顔を見合わせると破顔して
「やれやれ。最後まで君はつれないねえ。だが、そうだね。俺ももう1度、素敵な恋をするかな。君たちに負けないぐらい幸せな恋をね」
「はいっ」
嬉しそうに頷く雅紀の肩を、秋音は優しく抱き寄せた。
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