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きらめきのかけら4

「で。どっちにするよ?」 展望台に置かれた石造りのテーブルセットの1つに陣取り、袋から取り出した2種類の弁当を並べて、あきらは決断を迫ってくる。 「や、どっちって…うーん…」 あきらの真剣過ぎる眼差しが怖い。下手なチョイスをすると頭からバリバリ喰われそう…。うーん…。 「の」 「の?」 「え?いや、幕の内っ」 …あ…間違えた?俺、選択ミスった? 「ふーん…やっぱそっちか。筍ご飯、うまそうだったもんなー」 …うわぁ~やっぱり間違えたんだ。あきらさん、めっちゃ恨めしそうな顔してるっ 「俺っ、筍ご飯、半分あげますっ」 「マジかっ。んじゃどっちも半分ずつ食うか」 ………だったら最初からそう言ってよ~~ ものすごい脱力感に襲われているまさきの前で、あきらはウキウキと『豪華のり弁』の蓋を開け、真っ先にちくわ揚げを箸で持ち上げて 「ほれっ、あーん」 唐突に差し出された、ぷるぷる揺れるちくわ揚げを前に、まさきは完全に固まった。 「おいっ半分ずつだろ?早く口開けろって。あ、半分以上は食うなよ、ちゃんと残せよ。ほい、あーん」 …半分ずつだと何故に、あーん? しかも先に食うの、俺? きっちり半分じゃないと、ダメ? 「…冗談だよ。そんなドン引きすんなって。ほら、お前も蓋開けて早く食え」 まるで何事もなかったように、あきらはちくわ揚げをUターンさせて、パクっとかぶりついた。 「……あきらさん…さっきから俺のこと、おちょくってますよね?」 「んなことないぞー。あ、お前のお茶、これな。それにしても、のり弁なんて久しぶりに食ったけど、こうして食うと結構美味いのな」 「……。」 「こういう所で食うメシって、なんでこう美味いんだろな。空気がいいからかな。開放的な気分のせいもあるよな」 「それに、好きな人と食べると、美味しさって倍増しますよね」 その一言に、あきらの箸が止まる。まさきは蓋を開けた『幕の内弁当』から、筍ご飯を箸で一口分つまむと、 「はい、あきらさん、あーん」 にっこり笑いながら、あきらの口の前に差し出した。 口の中のものをごくっと飲み込み、そろそろと開いたあきらの口に、筍ご飯を突っ込む。 「美味しい?」 ニコニコしながら聞いてくるまさきに、あきらは無意識に口の中のものを咀嚼しながら 「お、おう。美味いよ」 反撃が成功して、すっかり大人しくなったあきらの様子に、まさきは満足気な顔をして、筍ご飯をひと口頬張った。 「ん。美味しいっ」 あきらの探るような視線を無視して、幸せそうに弁当を食べ続けていると 「なあ…おまえ、なんか…怒ってる?」 「怒ってません」 「いや、怒ってるだろ」 「怒ってないです」 …いや、怒ってんだろ。目が笑ってないし。 すっかり味気なくなったのり弁を、もそもそと口に入れていると、まさきが堪えきれないという感じで、クスクス笑い始めた。 「大人しいあきらさんって、ちょっと新鮮」 あきらは、はぁ~っと息を吐き出し 「なんだよ~マジで怒ったのかと思っただろ。脅かすなって」 まさきは尚も楽しげに笑いながら 「俺だってたまには反撃しますよ。あーんってした瞬間のあきらさんの顔。写真に残したかったなぁ」 …いや、あーんもたしかに驚いたけど、好きな人と食べるから美味しい…ってのが、かなり効いたよなぁ… あんな幸せそうな顔で、んなこと言われたら、ドキっとするだろ… 「おまえってさ、わりと罪作りなやつだよな…」 「は?」 「いや。無自覚だからこその罪作りなのか…」 頭に?を浮かべているまさきの顔を、まじまじと見つめてから、あきらは何でもないよと力無く笑って誤魔化し、のり弁の残りをかきこんだ。

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