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後日談 『おしおきー38』
汚してしまった下着を2人分、内風呂でせっせと洗っていると、部屋の呼び出しベルが鳴った。暁はぎゅっと水気を絞って、浴室の手すりに2枚並べて干すと、居間の方に戻った。
部屋着姿の雅紀がドアを開けて、応対している。どうやら夕食の準備が出来たらしい。
昨年同様、心尽くしの郷土料理が、座卓いっぱいに並べられていく。
さっきまで、拗ねて窓際のソファーでそっぽを向いていた雅紀も、目を輝かせて料理に見とれている。
仲居さんが料理の説明を終えて部屋を出ていくと、暁は雅紀の正面に腰をおろした。
「相変わらず、美味そうだよな~ここの料理」
暁が話しかけると、雅紀はバツの悪そうな顔でちらっと暁を見た。
雅紀の反応が素直すぎて、つい調子に乗って揶揄い過ぎた俺が悪い。雅紀が落ち込むことじゃない。
……んな顔すんなって。可愛いっつの
暁は何事もなかったような顔で、雅紀に微笑みかけた。雅紀はちょっと目を泳がせてから、ほっとした表情になり
「うん。すっごく美味しそうっ」
「おう。んじゃ、早速食うか」
久しぶりに暁と一緒にゆっくり過ごす夕食。ここの料理が美味しいのはもちろんだが、秋音と暁の喧嘩も無事におさまり、何のわだかまりもないような暁の楽しげな様子が、雅紀は嬉しくて仕方が無い。
いつもならば人の目が気になって出来ないお口あ~んも、暁にねだられる前に率先してやってあげたい。
「な……なに、どーした。おまえ、めっちゃサービスいいじゃん」
こっちが嫌がるとわざと猛烈におねだりしてくるくせに、雅紀がにこにこしながら料理を箸で摘んで差し出すと、暁は目を丸くして戸惑っている。
「食べないの? じゃ、俺食べちゃうから」
雅紀がわざと箸をUターンさせようとすると、暁は焦って身を乗り出し
「やっ。食う食うっ。頂きますっ」
慌てて開けた暁の大きな口に、雅紀はくすくす笑いながら、おかずを入れてあげて
「暁さんって天の邪鬼だ。俺が嫌がると無理矢理迫ってくるくせに」
暁は嬉しそうにもぐもぐしながら、ちょっと照れた顔になり
「や、だってさ~。おまえいつもは、なかなかデレてくれねえじゃん。うわぁ。雅紀にお口あ~んされちまったよ、俺」
暁は何故か立ち上がり、いそいそと雅紀の隣に座ると、デカい図体をすりすりと寄せてくる。雅紀は顔を顰めて
「行儀悪いです。今、食事中」
「え~もう少しデレてろよ~」
暁の身体を押し戻そうとする雅紀の肩を抱いて
「新婚さんなんだぜ、俺たち」
「や。まだ籍入れてないし」
「まだってことは、いずれ入れてもいいんだ?」
「……っ。……暁さん……」
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