403 / 445

後日談 『おしおきー38』

汚してしまった下着を2人分、内風呂でせっせと洗っていると、部屋の呼び出しベルが鳴った。暁はぎゅっと水気を絞って、浴室の手すりに2枚並べて干すと、居間の方に戻った。 部屋着姿の雅紀がドアを開けて、応対している。どうやら夕食の準備が出来たらしい。 昨年同様、心尽くしの郷土料理が、座卓いっぱいに並べられていく。 さっきまで、拗ねて窓際のソファーでそっぽを向いていた雅紀も、目を輝かせて料理に見とれている。 仲居さんが料理の説明を終えて部屋を出ていくと、暁は雅紀の正面に腰をおろした。 「相変わらず、美味そうだよな~ここの料理」 暁が話しかけると、雅紀はバツの悪そうな顔でちらっと暁を見た。 雅紀の反応が素直すぎて、つい調子に乗って揶揄い過ぎた俺が悪い。雅紀が落ち込むことじゃない。 ……んな顔すんなって。可愛いっつの 暁は何事もなかったような顔で、雅紀に微笑みかけた。雅紀はちょっと目を泳がせてから、ほっとした表情になり 「うん。すっごく美味しそうっ」 「おう。んじゃ、早速食うか」 久しぶりに暁と一緒にゆっくり過ごす夕食。ここの料理が美味しいのはもちろんだが、秋音と暁の喧嘩も無事におさまり、何のわだかまりもないような暁の楽しげな様子が、雅紀は嬉しくて仕方が無い。 いつもならば人の目が気になって出来ないお口あ~んも、暁にねだられる前に率先してやってあげたい。 「な……なに、どーした。おまえ、めっちゃサービスいいじゃん」 こっちが嫌がるとわざと猛烈におねだりしてくるくせに、雅紀がにこにこしながら料理を箸で摘んで差し出すと、暁は目を丸くして戸惑っている。 「食べないの? じゃ、俺食べちゃうから」 雅紀がわざと箸をUターンさせようとすると、暁は焦って身を乗り出し 「やっ。食う食うっ。頂きますっ」 慌てて開けた暁の大きな口に、雅紀はくすくす笑いながら、おかずを入れてあげて 「暁さんって天の邪鬼だ。俺が嫌がると無理矢理迫ってくるくせに」 暁は嬉しそうにもぐもぐしながら、ちょっと照れた顔になり 「や、だってさ~。おまえいつもは、なかなかデレてくれねえじゃん。うわぁ。雅紀にお口あ~んされちまったよ、俺」 暁は何故か立ち上がり、いそいそと雅紀の隣に座ると、デカい図体をすりすりと寄せてくる。雅紀は顔を顰めて 「行儀悪いです。今、食事中」 「え~もう少しデレてろよ~」 暁の身体を押し戻そうとする雅紀の肩を抱いて 「新婚さんなんだぜ、俺たち」 「や。まだ籍入れてないし」 「まだってことは、いずれ入れてもいいんだ?」 「……っ。……暁さん……」

書籍の購入

ロード中
ロード中

ともだちにシェアしよう!